トラックの許可更新制とは?いつから始まる|第1回
トラック運送の事業許可が、5年ごとの更新制になります。この 許可更新制 は法律ですでに決まっており、令和7年(2025年)6月11日に公布済みです。決まっていないのは「いつから始まるか」のほうです。
この記事では、2026年9月時点で条文として確定していることと、まだ何も決まっていないことを分けて整理します。当社(株式会社石名坂)は自家用(白ナンバー)のダンプで砕石や残土を運ぶ会社ですが、関連会社の有限会社石名坂商事が一般貨物自動車運送事業(緑ナンバー)の許可を持っており、この 許可更新制 の対象になります。他人事ではない立場から書いています。

トラック運送の 許可更新制 が新設されました
根拠は「貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律」(令和7年法律第60号)です。2025年6月4日に成立し、6月11日に公布されました。衆議院国土交通委員長提出の議員立法です(出典:衆議院 制定法律情報、日本法令索引)。
この法律が貨物自動車運送事業法に第6条の2(許可の更新)を新設します。条文には「五年ごとにその更新を受けなければ、その期間の経過によって、その効力を失う」と書かれています。5年という周期は検討段階の案ではなく、法律の本文に書かれた確定事項です。
対象は、一般貨物自動車運送事業(法第3条の許可)と特定貨物自動車運送事業(法第35条第1項の許可。特定貨物は第35条第5項で同じく5年ごと)です。一方、貨物軽自動車運送事業(法第36条)は届出制のままで、対象外です。軽貨物の車両で運ぶ事業は、この更新制の枠の外にあります。
許可更新制 の前は、期限がありませんでした
現行の貨物自動車運送事業法には、第6条の2にあたる条文が存在しません。一般貨物自動車運送事業の許可には有効期間の定めがなく、取消しや廃業の届出がない限り、一度取得すれば無期限に有効でした。
建設業許可(5年)や産業廃棄物収集運搬業許可(原則5年)を持っている方には、「期限のない許可」のほうが例外的に見えるかもしれません。運送の許可は、そのめずらしい側に立っていた許可です。今回の 許可更新制 は、そこに期限を入れる改正だと言えます。
「許可」になる前は「免許」でした
もう少しさかのぼると、トラック運送はそもそも「許可」ですらありませんでした。
平成2年(1990年)12月1日に貨物自動車運送事業法と貨物運送取扱事業法が施行されるまで、トラック運送は道路運送法が定める事業でした。「一般路線貨物自動車運送事業」と「一般区域貨物自動車運送事業」に分かれており、いずれも免許制です。この2つの区別を廃止して「一般貨物自動車運送事業」に統合し、免許制を許可制に改めたのが、いわゆる物流二法でした。
つまりトラック運送の事業許可は、この35年あまりのあいだに次の道をたどってきたことになります。
- 平成2年(1990年)12月1日より前 道路運送法の免許制。路線と区域に分かれていた
- 平成2年(1990年)12月1日 物流二法の施行。免許制から許可制へ。路線・区域の区別を廃止し、一般貨物自動車運送事業に統合
- これから(令和10年〈2028年〉6月までに全面施行予定) 許可に5年の期限が入る
当社の関連会社である有限会社石名坂商事は、平成2年(1990年)6月に一般区域貨物自動車運送事業の免許を受けて運送業を始めました(当社記録による)。物流二法が施行される半年前です。免許制の時代に事業を始め、35年あまりにわたって許可制のもとで続けてきて、これから更新制を迎えることになります。
ちなみに物流二法の施行時にも、それまでの免許を受けていた事業者は、新法の許可を受けたものとして扱われました。今回の改正でも同じ考え方がとられています(後述)。免許制から許可制への切り替え以来となる、許可の性格の変更だということです。
新しく入った条文を読む
許可更新制 を理解するうえで押さえておきたい条文は3つです。
- 第6条の2第1項(新設)… 5年ごとに更新を受けなければ、期間の経過によって許可の効力を失う
- 第6条第1項第三号の二(新設)… 許可の基準に「第十五条第一項の基準及び第二十五条第一項の基準を遵守してその事業を遂行することその他法令の規定を遵守してその事業を遂行することが見込まれること」を追加
- 第6条の2第5項(新設)… 「前三条の規定は、第一項の許可の更新について準用する」
ここでいう第15条は輸送の安全(過労運転の防止、点検整備など)、第25条は事業の適確な遂行(車庫の整備・管理、健康保険法等の保険料等の納付など)を定めた条文です(出典:e-Gov法令検索 貨物自動車運送事業法、2026年9月時点)。
なお、この2つの条番号は令和6年法律第23号で繰上げ・繰下げが行われています。第15条は旧第17条、第25条は旧第24条の4にあたります。他所の解説記事や書籍には古い条番号のままのものが残っているため、条文を確認するときは注意が必要です。
そして3つ目の第6条の2第5項が、この 許可更新制 の性格を決めています。「前三条」とは第4条(許可の申請)・第5条(欠格事由)・第6条(許可の基準)です。つまり更新は、新規許可の審査規定をそのまま当てはめる構造になっています。まったく別の審査が新設されるのではなく、新規許可でやることを、5年ごとにもう一度やるという組み立てです。

図:更新は、新規許可の規定をそのまま当てはめる仕組みになっている
もっとも、更新の申請様式も、添付書類も、審査でどこまで確認するかを定めた省令・通達も、2026年9月9日時点では確認できていません。「準用する」という条文があるだけの状態です。この点は本シリーズの第4回で、現行の新規許可の審査基準を手がかりに読み解きます。
許可更新制 はいつから始まるのか
施行日は未定です。法60号の附則第1条本文は「公布の日から起算して三年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する」と定めています。同条にはこのほか、公布の日から施行される規定などを掲げたただし書と号が置かれています。この施行期日を定める政令は2026年9月9日時点で確認できませんでした。法律上の外側の期限は、公布日から3年後の令和10年(2028年)6月10日です。
ただし、国土交通省は文書で目標時期を示しています。2026年7月14日の物流政策推進関係者会議 第1回に提出された資料4には「令和10年6月までにトラック適正化二法を全面施行予定」と記載されています。法定の期限いっぱいを見込んだ書き方です。
同会議の資料2では、施行までの順序が図で示されています。
- 適正原価の告示
- → 許可更新制 などの施行
- → 2年の経過措置
- → 更新の申請および審査の開始(5年めどで一巡)
先頭にある「適正原価の告示」は、国土交通省の「適正原価の設定に向けた有識者検討会」で議論が進んでいます。第1回が2026年7月17日、第2回が8月26日に開かれています。第3回以降の日程は2026年9月9日時点で公表されていません。年内を目途に提言をとりまとめる想定です。告示の時期が決まらなければ施行日も動かない構造になっており、許可更新制 の日程は適正原価の議論とつながっています。適正原価そのものについては、既存記事「「適正原価」とは?トラック運賃の新ルールをわかりやすく解説」もあわせてご覧ください。
2026年4月に施行された部分とは別のものです
混同しやすいところなので、先に整理しておきます。同じ令和7年法律第60号でも、第1条関係の改正は令和8年(2026年)4月1日にすでに施行済みです。
- 委託次数の制限(元請が再委託を2回以内に制限するよう努める努力義務、第23条の4)
- 違法な白ナンバー事業者に運送を委託した荷主等への取締り(100万円以下の罰金)
- 書面交付義務等の貨物利用運送事業者への適用
これらはもう動いている規制です。一方、 許可更新制 は第2条関係で、施行日はこれからです。「2026年4月から何か始まったらしい」という話と「許可が5年更新になるらしい」という話は、同じ法律の別の部分だとお考えください。すでに施行された部分については「【令和7年改訂】改正貨物自動車運送事業法のポイント(書面化・実運送体制管理簿)」と「【解説】トラック適正化二法とは?」で扱っています。
すでに許可を持っている事業者はどうなるか
改めて新規許可を取り直すことは想定されていません。法60号 附則第4条第1項により、施行の際に現に許可を受けている事業者は、施行日に新法の許可を受けたものとみなされるとされています。許可に条件が付いている場合、その条件も引き継がれます。
問題は、その後の最初の更新がいつ来るかです。附則第4条第2項は、第6条の2第1項の「五年ごと」を、みなし許可を受けた日から「二年を経過した日から七年を経過する日までの間において国土交通省令で定める日まで」と読み替えると定めています。
国土交通省の図では、施行から2年の経過措置を置いたうえで更新の申請・審査が始まるとされています。そこから5年かけて全事業者の初回更新が一巡する設計で、同省の資料でも「5年めどで一巡」と説明されています。自社の期日がその5年のどこに入るかは省令で決まりますが、その省令は2026年9月9日時点で確認できていません。いまの時点で、自社の初回更新日を知る方法はありません。

図:施行から2年は更新の申請がなく、そこから5年かけて全事業者が一巡する
決まっていることと、決まっていないこと
| 項目 | 2026年9月時点の状況 |
|---|---|
| 更新周期 | 5年(第6条の2第1項に明記。確定) |
| 既存事業者のみなし許可 | 施行日に新法の許可を受けたものとみなす(附則第4条第1項。確定) |
| 初回更新の枠 | みなし日から2年経過日〜7年経過日の間(附則第4条第2項。確定) |
| 登録免許税 | 更新には課さない(法60号 附則第8条で「更新の許可を除く」を追加。確定) |
| 施行日 | 未定。政令が定める日。外側の期限は令和10年(2028年)6月10日 |
| 個社ごとの初回更新日 | 未定。省令が未制定 |
| 申請様式・添付書類・審査の運用 | 未定。省令・通達を確認できず |
| 更新手数料の額 | 未定 |
| 更新事務を担う独立行政法人 | 未定。「別に法律で定める独立行政法人」(第6条の2第4項)とされるのみで、法人名は一次資料にない |
登録免許税については、法60号 附則第8条が登録免許税法別表第一を改正し、「更新の許可を除く」を加えています。新規の一般貨物自動車運送事業の許可には登録免許税がかかりますが、更新にはかからないという整理です。ただし、これとは別に、更新手数料を財源に充てる方針が「貨物自動車運送事業の適正化のための体制の整備等の推進に関する法律」(令和7年法律第61号。以下「法61号」)の第4条第二号イに書かれています。手数料の額は未定です。
情報の追い方
施行日がいきなり明日決まるということはなさそうです。過去の実例では、施行期日を定める政令は施行日の4か月前後に閣議決定・公布されています。今回の法60号 第1条関係も、2025年11月21日に閣議決定、11月27日に公布、施行が2026年4月1日でした(約4か月前)。
施行に必要な国土交通省令は、さらにその後に公布されます。確認できた直近の例では、公布から施行までは約2か月でした(令和7年1月31日公布・同年4月1日施行)。省令の公布前にはパブリックコメントが実施されており、2026年4月1日施行分は2月20日を締切として実施されました。パブリックコメントが出たら、そのあと省令の公布を経て施行、という順番です。
あくまで過去の実例であって、今回もそうなるとは限りません。ただ、順序が読めていれば、慌てずに構えられます。続報を追うとすれば、次の3つが情報源になります。
- 国土交通省「適正原価の設定に向けた有識者検討会」の配布資料・議事概要
- 国土交通省の報道発表(政省令・告示・パブリックコメント)
- 内閣官房「物流政策推進会議」(検討会の提言が諮られる場)
なお、2026年9月9日時点で、全日本トラック協会の公式サイトには 許可更新制 のみを解説した説明会資料は掲載されておらず、岩手県トラック協会の公式サイトでも、同じく2026年9月9日時点で関連する記事や説明会の案内は確認できませんでした。業界団体からの案内はこれから出てくる段階だと考えられます。
当社の受け止め
株式会社石名坂は土木工事と砕石・砂利販売を行っており、運搬は自家用(白ナンバー)のダンプです。したがって、今回の 許可更新制 の直接の対象ではありません。対象になるのは、平成2年(1990年)6月の免許以来続けてきた、関連会社の有限会社石名坂商事の一般貨物自動車運送事業のほうです。
この「本体は建設業で白ナンバー、関連会社が緑ナンバー」という形は、岩手の建設業ではめずらしくありません。同じ構造の会社にとって、更新制はグループのどこかに必ず当たる制度です。だからこのシリーズでは、自分たちの立場から書くことにしました。
もうひとつ付け加えると、建設業に携わる会社にとって「5年更新」自体は目新しい仕組みではありません。建設業許可は5年ごと、産業廃棄物収集運搬業許可は原則5年ごとの更新です。関連会社の有限会社石名坂商事は、平成8年(1996年)の当初許可から産廃の許可を継続してきました(詳細は第5回)。運送の許可が、その列に一つ加わるという捉え方ができます。
いま言えるのは、制度の骨格は法律で確定しているが、運用は何ひとつ決まっていない、ということです。省令や通達が出るまでは、断定的に「こうなる」と書かれた情報のほうを疑ったほうがよさそうです。当ブログでは、一次資料が出るたびに内容を追い、このシリーズで共有していきます。
関連する法改正の解釈については、国土交通省のQ&Aが随時更新されています。「【最新】改正貨物自動車運送事業法のQ&Aが更新!国交省の解釈を確認」もあわせてご覧ください。
なお、本記事は2026年9月9日時点で公表されている一次資料をもとに整理したものです。制度は今後の政令・省令で具体化されます。自社の許可について個別の取扱いを確認される場合は、所管の運輸支局(岩手県内の事業者であれば岩手運輸支局)にお問い合わせいただくのが確実です。
このシリーズの記事
- 第1回 トラックの許可が5年ごとの更新制になります(この記事)
- 第2回 運賃と許可が、つながりました
- 第3回 貸切バスは、9年前から5年更新制です
- 第4回 更新審査で見られる項目を、いまの許可基準から読む
- 第5回 建設業と運送業を、グループで分けている会社へ
あわせて読みたい
- 【令和7年改訂】 改正貨物自動車運送事業法 のポイント(書面化・実運送体制管理簿)
- 【解説】 トラック適正化二法 とは?岩手県トラック協会の講習会で感じた物流の未来
- 【最新】改正貨物自動車運送事業法のQ&Aが更新!国交省の解釈を確認
運搬・工事のご相談
石名坂は自社ダンプで砕石や残土の運搬を行っています。法令に沿った運用についてのご相談も承ります。
お電話:019-638-7521(平日8:00〜17:00)/ お問い合わせフォームはこちら


