トラックが読む貸切バス更新制の9年|第3回
トラックの許可が5年更新制になる、という話の先例が、すでにあります。 貸切バス 更新制 です。2017年(平成29年)4月1日に施行され、2026年9月時点で9年が経ちました。
この記事では、先に更新制になった業界で、実際に何を出させられているのかを一次資料から整理します。トラックの許可更新制に関する省令・通達・様式はまだ一つも公表されていませんが、法律の条文の型はバスとよく似ています。「たぶんこうなる」を考える材料として読んでいただければと思います。
あわせて、数字の読み方についても正直に書きます。「更新制で事業者が25.4%減った」という言い方ができそうな数字はありますが、その期間はコロナ禍と完全に重なっており、要因を分けた公的な分析は見つかりませんでした。そこは分けて書きます。

貸切バス 更新制 は2017年4月に始まりました
根拠は「道路運送法の一部を改正する法律」(平成28年法律第100号)です。この法律で道路運送法に第8条(一般貸切旅客自動車運送事業の許可の更新)が新設され、2017年4月1日に施行されました。
条文の書き出しは「一般貸切旅客自動車運送事業の許可は、五年ごとにその更新を受けなければ、その期間の経過によつて、その効力を失う」です。2025年(令和7年)6月に公布されたトラック側の貨物自動車運送事業法 第6条の2と、ほぼ同じ言い回しになっています。
構造も同じです。道路運送法第8条第4項は、第5条(申請)から第7条(欠格事由)までを更新に準用しています。トラックの第6条の2第5項が第4条〜第6条を準用しているのと同じ形で、更新は「継続の確認」ではなく、新規許可の審査をやり直す仕組みだということです。
同じ改正で、欠格期間が2年から5年に延長され、第2章の2第2節に一般貸切旅客自動車運送適正化機関(第43条の9〜第43条の22)が創設されています(出典:衆議院 制定法律「道路運送法の一部を改正する法律」)。
なお、この法律の公布日には資料によって記載の違いがあります。衆議院の制定法律情報は「法律第百号(平二八・一二・九)」=2016年12月9日と記載しており、法令データベースの沿革も同日です。法律番号は公布順に付されるため、12月9日公布の平成28年法律第101号より後に第100号が公布されることはありません。したがって公布日は12月9日と考えられます。
国土交通省のフォローアップ会議資料にある「改正道路運送法公布(12/16)」は、同じ国会で2016年12月16日に公布された別の法律(平成28年法律第106号)、または施行期日を定める政令の公布日との混同とみられます。本記事は12月9日を採ります。
制度ができるまでの経緯
2016年(平成28年)1月に 貸切バス の重大事故が発生し、15名が亡くなりました。当該事業者への特別監査で法令違反が確認され、同年2月19日に事業許可が取り消されています(出典:国土交通省 フォローアップ会議 第10回 資料1、令和7年〈2025年〉11月10日)。
国土交通省は同年1月22日に検討委員会を設置し、1月29日から6月3日まで計10回開催しています。ここでとりまとめられた「安全・安心な 貸切バス の運行を実現するための総合的な対策」は全85項目で、更新制はそのうち「法令違反の早期是正、不適格者の排除等」(21項目)に置かれました。
更新制は、同年3月29日の中間整理の段階では「引き続き検討すべき事項」とされ、最終的に85項目の対策に位置づけられています。85項目は2018年に全項目の対応が完了したとされています。
既存事業者は5年かけて一巡した
すでに許可を持っていた事業者の初回更新日は、恣意性を排除するため、許可(免許を含む)を受けた年の西暦下一桁で更新年を割り振り、月日は許可日に合わせる方法で決められました。たとえば2001年1月6日に許可を受けた事業者は2021年1月6日まで有効、という具合です。2017年4月1日から2022年3月31日までの5年間で全事業者が一巡しています(出典:国土交通省 参考資料、平成29年〈2017年〉2月28日報道発表)。
トラック側も、既存事業者は施行日に新法の許可を受けたものとみなされ、初回更新はみなし日から2年経過日〜7年経過日の間で省令が定める日とされています。「数年かけて順次一巡させる」という運用の考え方は共通しています。この点は第1回で扱いました。
更新のときに、何を出しているのか
ここが本題です。根拠は通達「一般貸切旅客自動車運送事業の許可及び事業計画変更認可申請の処理について」(平成11年〈1999年〉12月13日制定、直近の一部改正 令和7年〈2025年〉3月31日)の別紙「2.事業許可の更新(法第8条)」です(出典:国土交通省 通達)。
まず、事業計画全般(営業区域、営業所、車庫、休憩仮眠施設、車両数、管理運営体制、運転者、損害賠償能力など)が、新規許可の審査基準1.(1)〜(16)に準じて審査されます。ただし債務超過、資金計画、法令遵守の処分歴に関する一部の項目は除かれます。
そのうえで、更新に固有の書類が加わります。
| 書類 | 対象期間 | 中身 |
|---|---|---|
| 安全投資計画 | 今後5年 | 事業の展望、安全投資の概要、運転者・運行管理者・整備管理者の確保予定人数、車両確保計画、点検整備計画、ドライブレコーダー導入計画、デジタルタコグラフ導入計画、適性診断受診計画と、それぞれの費用 |
| 事業収支見積書 | 今後5年 | 営業収益/営業費用(適正化機関に納入する負担金の額を含む)/営業外収益・費用/他事業からの繰入。人件費・車両整備費等が所要の単価を下回らないこと、計画期間中毎年連続赤字でないこと |
| 安全投資実績 | 前回の許可期間分(おおむね5年) | 更新時のみの追加書類 |
| 事業収支実績報告書 | 前回の許可期間分(おおむね5年) | 更新時のみの追加書類。「専門的な知見を有する者から見て、適切なもの」であることが求められる |
対象期間について、通達の別紙2には「過去5年」という明記はありません。関東運輸局の記入例では、前回許可日が属する事業年度から申請日時点の直近事業年度までの分を提出する扱いになっています。
太字にした2つが、更新でだけ求められる書類です。計画だけでなく、過ぎた許可期間の実績を書面で説明するという点が、新規許可との一番の違いです。

図:更新のときだけ出す2つの書類と、外部の専門家が突き合わせる5つの費目
実績には外部の専門家が関わります
事業収支実績報告書の「専門的な知見を有する者から見て、適切なもの」という要求は、実務上、外部の専門家が作成する「手続実施結果報告書」を添付する形で運用されています。今回確認できたのは関東運輸局が公開している税理士用の様式で、修繕費、ドライブレコーダー・デジタコの導入費、給与、法定福利費、健康診断費用などを、請求書・領収書・賃金台帳等と突合する手続が定められています(出典:関東運輸局 手続実施結果報告書〈税理士用〉)。
つまり、5年前の領収書や賃金台帳が整理されているかどうかが、そのまま申請の作業量に跳ね返る設計です。関東運輸局が公開している更新許可申請書の記入例は31ページあります。
申請できる期間は1か月だけ
通達は申請時期を「別途地方運輸局が定める」としており、各局が公示で指定しています。関東運輸局の例(平成29年〈2017年〉3月7日公示)は次のとおりです。
| 有効期間の満了の日 | 申請時期 |
|---|---|
| 4月1日〜6月30日 | 同年2月中 |
| 7月1日〜9月30日 | 同年5月中 |
| 10月1日〜12月31日 | 同年8月中 |
| 1月1日〜3月31日 | 前年11月中 |
申請月は、有効期間の満了日が属する四半期の初月から2か月前の月にあたります(出典:関東運輸局 公示)。満了日との間隔は満了日がいつかによって約1〜5か月とばらつきますが、申請できるのは指定された1か月間だけです。各局が個別に公示で定めるため、全国一律の規定ではありません。
期限内に必要書類を提出すれば処分が出るまで許可は失効しませんが(法第8条第2項)、有効期間を過ぎれば許可は自動的に失効し、救済措置はないとされています(出典:国土交通省 参考資料 FAQ Q4)。
更新されない場合として挙がっている事由
- 直近1事業年度が債務超過であり、かつ直近3事業年度の収支が連続赤字である場合(親会社等からの支援が客観的に説明できる場合を除く)
- 地域別最低賃金以上の賃金が支払われていない場合
- 前回許可期限満了日の翌日から申請時までの間に、毎年連続して行政処分(使用停止以上)を受けている場合
- 同期間に行政処分を受けたが、申請時までに認定機関の運輸安全マネジメント評価を受けていない場合
- 計画上、5年間連続で収支を赤字としている場合
- 人件費・車両整備費等が所要の単価を下回る単価に基づく収支見積となっている場合
- 法令試験の正答率が90%未満の場合
法令試験は更新時も改めて受験し、再試験は1回のみです。2017年2月時点のFAQでは、 貸切バス 事業者安全性評価認定制度(セーフティバス)で一ツ星以上を取得している事業者は免除とされていました。ただし、この免除が現在も同じ形かは、令和7年(2025年)3月31日改正後の通達では確認できていません。
なお、更新許可申請の手数料または登録免許税の額を示す一次資料は、今回の調査では特定できませんでした。金額は本記事には書きません。
貸切バス の事業者数は、どう動いたか
事業者数の推移です(出典:国土交通省「貸切バス 事業の概況」。事業者数は物流・自動車局調べ「一般貸切の許認可状況等調査」。出典の凡例は「事業者数(社)」ですが、本記事では運送事業の慣行にならい「者」と表記します)。
| 年度 | 事業者数 | 備考 |
|---|---|---|
| 平成10(1998) | 2,122者 | 規制緩和前 |
| 平成12(2000) | 2,864者 | 需給調整規制の廃止 |
| 平成28(2016) | 4,524者 | 更新制の施行直前(ピーク圏。最多は平成24年度4,536者) |
| 平成29(2017) | 4,324者 | 更新制 施行年度 |
| 令和2(2020) | 3,789者 | コロナ禍 |
| 令和4(2022) | 3,556者 | 既存事業者の初回更新が一巡した令和3年度末(2022年3月31日)の翌年度 |
| 令和6(2024) | 3,376者 |

図:25.4%減ったのは事実だが、更新制が原因かどうかは切り分けられていない
平成28年度の4,524者から令和6年度の3,376者へ、1,148者の減、率にして25.4%の減です(差分と率は上記の公表値から算出)。
ただし、この数字を「更新制の効果」として読むことはできません。減少が大きい2020〜2021年度は新型コロナウイルスによる需要消失と完全に重なっており、同じ資料の輸送人員は平成29年度の2億9,731万人から令和2年度の1億4,129万人へ半減しています。更新制による退出と、需要要因や後継者不在による退出とを切り分けた公的な分析は、今回の調査では確認できませんでした。
もうひとつ、率直に書いておきます。更新の申請件数、不許可件数、申請せずに失効した事業者数を集計・公表した国土交通省の資料は、見つかりませんでした。地方運輸局は行政処分の状況を公表していますが、更新の可否の集計は公表資料として確認できていません。推定した数字を書くことはしません。
国土交通省が示している効果は、事故件数の指標です。同乗者の死亡事故件数( 貸切バス 事業者第一当事故に限る)は2015年・2024年ともに0件を継続、同乗者の負傷事故件数は2015年の43件から2024年の21件になっています(出典:フォローアップ会議 第10回 資料1)。
ここも注意が必要です。この指標は更新制単独の効果ではなく、85項目の対策全体の結果として示されているものです。ドライブレコーダーの義務化、点呼の強化、運行管理者の選任数引上げ、監査の重点化なども同時に進んでおり、更新制の寄与を分離した数値は示されていません。
トラックは、バスと同じになるのか
結論から書くと、分かりません。トラックの許可更新制に関する省令・通達・様式は、2026年9月9日時点で一つも公表されていません。同じになると断定できる材料はありません。そのうえで、一次資料から言える範囲を2つに分けます。
同じになりそうな部分は、法律の型に由来するものです。
- 「5年ごとに更新を受けなければ効力を失う」という条文の書きぶり
- 申請・欠格事由・許可基準を準用する、新規許可の審査をやり直す構造
- 既存事業者を数年かけて順次一巡させる運用(トラックは「5年めどで一巡」とされている)
- 更新の実質が、過ぎた期間の実績の審査になること
- 行政処分歴が更新の可否に直結する設計
一方、制度の目的も周辺の仕組みも異なります。
| 論点 | 貸切バス | トラック |
|---|---|---|
| 導入の動機 | 安全対策85項目の一部 | ドライバー不足(2030年に輸送能力34%不足の試算)と賃金・取引の適正化 |
| 更新事務の担い手 | 地方運輸局・運輸支局 | 更新事務の一部を独立行政法人に行わせることができる(第6条の2第4項。法人名は一次資料になし) |
| 価格規制との連動 | 公示運賃の下限割れ防止 | 適正原価を告示することとされている(2026年9月時点で未告示)。下回らないことを受注側・発注側の双方に義務づけ、収受は更新要件に連動 |
| 下請構造 | 旅行業者との取引適正化が論点 | 多重下請けそのものを規制対象化(再委託を2回以内に制限するよう努める努力義務) |
| 白ナンバー | 制度の中心論点ではない | 白トラの利用を荷主側も含めて規制(100万円以下の罰金) |
| 手数料 | 額を示す一次資料を確認できず | 「更新申請時には、一定の手数料収受を想定」と明記(出典:近畿運輸局 トラック適正化二法 説明資料 p.9) |
注目したいのは、適正化事業についてはトラックが先行し、 貸切バス が後追いだったという点です。2016年3月の中間整理には「民間団体等の活用による監査事務を補完する仕組みの構築(トラックは導入済)」と書かれています。更新制については、逆にバスが先行しました。同じ順番で並ぶわけではない、ということです。
トラック側の制度の骨格については第1回で、運賃と更新がつながった部分については第2回で扱っています。適正原価そのものは「「適正原価」とは?トラック運賃の新ルールをわかりやすく解説」もあわせてご覧ください。
貸切バス の経験から、先回りできそうなこと
以下は 貸切バス の制度運用から読み取れる論点であって、トラックで同じ扱いになると申し上げるものではありません。それでも、考えておく価値はあると思います。
- 過去の実績を書類で説明できるか。バスでは修繕費・ドラレコ導入費・給与・法定福利費・健康診断費用を、請求書、領収書、賃金台帳、総勘定元帳、固定資産台帳と突合しています。日々の証憑の整理が、そのまま申請の作業量を決めます
- 財務は組み合わせで判定されうる。バスの更新拒否事由は「直近1期が債務超過かつ直近3期連続赤字」で、親会社等の支援が客観的に説明できる場合は除かれます
- 行政処分の後始末。「毎年連続して処分」で更新不可、「処分を受けたのに第三者評価を受けていない」でも更新不可という建て付けです
- 申請の窓が短いことがある。バスは局の公示で1か月間に限定されており、期限管理そのものが実務課題になります
- 安全性評価認定の位置づけ。バスではセーフティバス一ツ星以上で法令試験が免除される扱いが示されていました。トラックのGマークが更新審査でどう扱われるかは、今後の省令・通達で確認すべき点です
- 社会保険・最低賃金が入り口要件。バスは最低賃金未満の支払いを更新拒否事由に置いています。トラック側も「労働者の適切な処遇の確保」が更新の要件に関わるとされています
このうち最初の項目は、更新制の施行を待たずに効いてくる話でもあります。書面化義務や実運送体制管理簿など、すでに始まっている記録の整備については「【令和7年改訂】改正貨物自動車運送事業法のポイント(書面化・実運送体制管理簿)」で扱っています。制度全体の流れは「【解説】トラック適正化二法とは?」もご参照ください。
当社の受け止め
株式会社石名坂は土木工事と砕石・砂利販売の会社で、運搬は自家用(白ナンバー)のダンプです。今回の許可更新制の直接の対象ではありません。対象になるのは、関連会社の有限会社石名坂商事が持つ一般貨物自動車運送事業の許可のほうです。
貸切バス の資料を読んで一番手が止まったのは、「前回の許可期間分の実績を、領収書と賃金台帳と突き合わせて説明する」という部分でした。トラックで同じ書類が求められると決まったわけではありません。ただ、5年前の記録を、5年後に説明できる形で残せているかという問いは、様式が出る前から成り立つ問いです。
建設業に携わる会社にとって、5年更新という仕組み自体は目新しいものではありません。建設業許可は5年更新、産業廃棄物収集運搬業許可は原則5年(優良認定を受けた場合は7年)で、有限会社石名坂商事は平成8年(1996年)4月の当初許可から産廃の許可を継続してきました。更新のたびに書類を揃える作業には、グループとしての経験があります。
とはいえ、運送の更新審査が産廃と同じ重さになるのか、 貸切バス に近くなるのかは、まだ分かりません。当社としても、いまは一次資料を追いながら制度の形を把握している段階です。分かったことが増えたら、このシリーズで共有していきます。国土交通省のQ&Aの動きについては「【最新】改正貨物自動車運送事業法のQ&Aが更新!国交省の解釈を確認」でも追っています。
なお、本記事は2026年9月9日時点で公表されている一次資料をもとに整理したものです。 貸切バス の運用がそのままトラックに適用されると決まったものではありません。自社の許可について個別の取扱いを確認される場合は、所管の運輸支局(岩手県内の事業者であれば岩手運輸支局)にお問い合わせいただくのが確実です。
このシリーズの記事
- 第1回 トラックの許可が5年ごとの更新制になります
- 第2回 運賃と許可が、つながりました
- 第3回 貸切バス は、9年前から5年更新制です(この記事)
- 第4回 更新審査で見られる項目を、いまの許可基準から読む
- 第5回 建設業と運送業を、グループで分けている会社へ
あわせて読みたい
運搬・工事のご相談
石名坂は自社ダンプで砕石や残土の運搬を行っています。法令に沿った運用についてのご相談も承ります。
お電話:019-638-7521(平日8:00〜17:00)/ お問い合わせフォームはこちら


