「適正原価」とは?トラック運賃の新ルールをわかりやすく解説

「トラックの運賃を安くしすぎると法律違反になる」——そんな新しいルールが検討されているのをご存知でしょうか。国土交通省は令和8年(2026年)7月、トラック運賃に関する「適正原価」制度の論点をまとめた資料を公表しました。専門用語が多く分かりにくい内容ですが、荷物を運ぶ運送会社だけでなく、荷物を送る側の企業にも関わる重要なルールです。本稿では、その内容をできるだけ易しい言葉で解説します。

適正原価とは?トラック運賃の新ルールを示すインフォグラフィック
「適正原価」制度のポイント

「適正原価」ってそもそも何?

簡単に言うと、「トラックで荷物を運ぶために最低限かかる費用」のことです。燃料代や人件費、車の減価償却費、安全のための費用などを積み上げて計算します。国は今後、この「適正原価」を正式に告示(公表)し、運送会社はこの金額を下回る運賃・料金で仕事を引き受けたり、他社に発注したりしてはいけない、というルールを作ろうとしています。

これまでにも「標準的な運賃」という目安はありましたが、あくまで参考程度のもので、法的な強制力はありませんでした。今回の「適正原価」は違います。法律(貨物自動車運送事業法)に基づく制度として、下回ると違反になる「守らなければならない最低ライン」として位置づけられます。

なぜこのルールが必要なの?

トラック運送業界では、荷主(荷物を送る側)との価格交渉力が弱く、運賃を買い叩かれてしまうケースが少なくありませんでした。その結果、ドライバーの賃金や安全対策にお金が回らず、長時間労働や事故のリスクにつながるという問題が指摘されてきました。「適正原価」を守るべきルールとして明確にすることで、こうした過度な値下げ競争(いわゆるダンピング)に歯止めをかけ、ドライバーの賃上げや安全確保につなげる狙いがあります。

誰が守らなければいけないルールなの?

ポイントは、運送会社が「仕事を受ける側」だけでなく「仕事を発注する側」になったときにも義務がある点です。例えば、荷主から仕事を直接受けた運送会社(元請け)が、その仕事の一部を別の運送会社(下請け)に再委託する場合、発注する側の運送会社にも「適正原価を下回る金額で発注してはいけない」という義務が課されます。荷物の流れに関わる運送会社は、受注者としても発注者としても、このルールの対象になるということです。

ルールを守らないとどうなる?

運送会社が適正原価を下回る運賃・料金を継続的に受け取ったり支払ったりしていると、行政による立ち入り指導や監査の対象となり、最終的には事業許可の更新が認められなくなる可能性があります。運送業の許可は5年ごとに更新が必要なため、これは事業継続に直結する重い措置です。また、運賃を買い叩いている荷主側についても、国が是正を求める「トラック・物流Gメン」による指導や、悪質な場合は企業名の公表といった対応が取られる仕組みが用意されています。

なお、1回の取引で一時的に適正原価を下回ったからといって、即座に違反になるわけではありません。問題とされるのは、そうした状態が一定期間にわたって継続している場合です。

「適正原価」には何が含まれるの?

主に次のような費用の積み上げで計算される見込みです。

特に「安全確保のための費用」と「事業継続のための投資費用」は、これまでの「標準的な運賃」にはなかった新しい項目として、今回追加が検討されています。安さを追求するあまり安全対策や将来への投資が犠牲になる、という事態を防ぐための工夫といえます。

今後、どう決まっていくの?

今回の資料はあくまで「論点整理」の段階であり、具体的な金額や算定式はこれから議論が進められます。地域や車両の種類ごとにどう細かく分けるか、荷物が空荷で戻る場合の扱い、物流の効率化に取り組む会社が損をしない仕組みづくり、物価変動への対応など、詰めるべき論点はまだ多く残されています。今後の国土交通省の審議の動向が注目されます。

まとめ

「適正原価」制度は、トラック運賃に法的な下限ラインを設けることで、行き過ぎた値下げ競争に歯止めをかけ、ドライバーの賃金や安全確保にしっかりお金が回る業界を目指す取り組みです。運送を発注する企業にとっても無関係な話ではなく、今後、運賃交渉の考え方が変わっていく可能性があります。制度の詳細が固まり次第、続報をお伝えします。

適正原価の設定に向けた論点提示についてはこちら

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