トラックの更新審査を現行基準から読む|第4回

トラック運送の 許可更新 審査 で何が見られるのか。それを定めた省令・通達・公示は、2026年9月9日時点で一件も確認できていません。ただし、まったく手がかりがないわけではありません。

更新の条文(第6条の2第5項)が新規許可の規定を準用しているため、いま新規許可で審査されている項目を読めば、更新審査 で問われうる範囲の見当はつきます。この記事では、岩手県を管轄する東北運輸局の現行基準を軸に、審査項目・記録の保存期間・巡回指導・違反点数を整理します。数値は運輸局ごとに違うため、他県向けの解説をそのまま使えない点も具体的に示します。

更新審査に備えて記録は何年残すのか。点呼記録や日報は1年、事故記録や指導監督の記録は3年、健康診断個人票や賃金台帳は5年で、更新の周期である5年に届かない記録が多いことを示した棒グラフ

更新審査 は、新規許可の審査をやり直す構造です

まず条文の構造から確認します。令和7年法律第60号で新設される貨物自動車運送事業法 第6条の2第5項は、次のように定めています。

前三条の規定は、第一項の許可の更新について準用する。

「前三条」とは、第4条(許可の申請)・第5条(欠格事由)・第6条(許可の基準)です。つまり更新は、まったく別の審査が新設されるのではなく、新規許可の審査規定をもう一度当てはめる組み立てになっています。

あわせて第6条第1項には第三号の二が新設され、「第十五条第一項の基準及び第二十五条第一項の基準を遵守してその事業を遂行することその他法令の規定を遵守してその事業を遂行することが見込まれること」が許可基準に加わります。第15条は輸送の安全、第25条は事業の適確な遂行を定めた条文です(出典:国土交通省 新旧対照表、e-Gov法令検索 貨物自動車運送事業法。2026年9月時点)。

第15条と第25条には、何が書いてあるのか

許可基準に組み込まれる2つの条文の中身を、先に開いておきます。どちらも「次に掲げる事項に関し国土交通省令で定める基準を遵守しなければならない」という書き方で、遵守すべき事項を号で並べる構造です。

内容
第15条第1項
(輸送の安全)
第1号必要な員数の運転者・従業員の確保、休憩睡眠施設の整備と管理、勤務時間および乗務時間の設定、その他過労運転を防止するために必要な事項
第2号事業用自動車の定期的な点検及び整備その他安全性を確保するために必要な事項
第25条第1項
(事業の適確な遂行)
第1号事業用自動車を保管することができる自動車車庫の整備及び管理に関する事項
第2号健康保険法等の定めるところにより納付義務を負う保険料等の納付その他の事業の適正な運営に関する事項
第3号前2号のほか、輸送の安全に係る事項以外で、事業を適確に遂行するために必要なもの
出典:e-Gov法令検索 貨物自動車運送事業法(2026年9月時点)
更新審査の許可基準に入る2つの条文。第15条の輸送の安全と、第25条の事業の適確な遂行。第25条には社会保険料の納付と、改正で追加される適正原価と労働者の処遇が含まれることを示した図

図:安全と経営の両方が、更新の許可基準に組み込まれている

注目したいのは第25条第1項第2号です。ここには現行法の時点ですでに「健康保険法等の定めるところにより納付義務を負う保険料等の納付」——つまり社会保険料の納付が入っています。健康保険や厚生年金保険の保険料を、従業員負担分と会社負担分の両方について納めているか、ということです。

令和7年法律第60号は、この第2号に「適正原価を下回らない額での貨物の運送の受託及び委託、労働者の適切な処遇の確保」を追加します。つまり改正後の第25条第1項第2号は、社会保険料の納付・適正原価・労働者の処遇を、ひとつの号でまとめて扱うことになります。運賃の話(第2回で扱いました)と社会保険の話が、同じ条文の中で並ぶ形です。

社会保険の未加入は、いまも行政処分の対象です。 更新審査 でどう扱われるかを定めた資料はありませんが、第25条第1項の遵守見込みが許可基準になるという条文の構造からすると、加入状況と納付の記録は整えておく意味があります。滞納や納付漏れを防ぐ仕組み——口座振替の利用や、給与天引きから納付までの社内フローの整備——は、更新の話を抜きにしても手をつけられる部分です。

ここから先は、はっきりさせておきたい前提があります。更新の申請様式・添付書類・更新審査 の運用を定めた省令、告示、通達、地方運輸局公示は、2026年9月9日時点で一件も確認できませんでした。国土交通省サイト、各地方運輸局サイト、全日本トラック協会サイトのいずれにも該当する文書はありません。東北運輸局・岩手運輸支局にも、更新制の案内は掲載されていません。

したがってこの記事は、「更新審査 ではこれが見られます」という書き方をしません。「新規許可では〜が審査される(根拠:公示)。更新は第6条の2第5項でこれを準用する」という形で読んでください。準用にあたって国土交通省令がどこまで読み替えや簡略化を行うかは、まだ誰にも分かりません。

岩手の事業者が見るべき基準はどれか

第6条の許可基準を具体化しているのは、法律でも省令でもなく地方運輸局長の公示です。根拠は次の階層になっています。

岩手県は東北運輸局の管内です。該当するのは東北運輸局公示第39号「一般貨物自動車運送事業及び特定貨物自動車運送事業の許可申請、事業計画変更認可申請等の処理方針について」(平成29年9月1日制定/最終改正 令和8年〈2026年〉4月1日 公示第5号)と、その細部取扱を定めた東北運輸局自動車交通部長通達(東自貨第242号、令和元年〈2019年〉10月10日)です。

ここが実務で効いてきます。公示は局ごとに出されており、数値が一致しません。解説記事のなかには、どの局の基準を採ったかが明示されていないものもあります。岩手の事業者がそれを鵜呑みにすると、実際の基準と食い違うことがあります。

東北運輸局と中部運輸局で、数値が違うところ

東北運輸局公示第39号と、中部運輸局公示第277号を突き合わせると、次の点が食い違います。

審査項目東北運輸局(岩手県)中部運輸局
営業所と車庫の距離直線5km以内直線10km以内
営業所の面積公示・細部取扱に数値の定めなし(規模が事業計画に対応して適切か、必要な備品があるかを写真で確認)おおよそ10㎡以上。ただし10㎡未満でも、机・椅子・電話等の営業上の対応を行う設備(計画)を有し、かつ運行管理等事業遂行上支障がないものであればよいとされている
車庫の前面道路原則として幅員証明書により車両制限令に適合(国道の例外規定は記載なし)車両制限令に適合。国道は原則として適合とみなす
所要資金に計上するリース料・建物/土地の賃借料1か年分1か月分
危険物輸送の賠償責任保険「必要な金額を担保できる保険契約に加入する計画」(金額の定めなし1事故につき最低1億円
更新審査の基準は運輸局ごとに違う。営業所と車庫の距離は東北運輸局が直線5km以内、中部運輸局が10km。リース料の資金計上や前面道路の確認も異なることを示した比較表

図:岩手は東北運輸局の管轄。営業所と車庫の距離は直線5km以内で、中部運輸局の10kmより短い

出典:東北運輸局公示第39号細部取扱(東自貨第242号)中部運輸局公示第277号。いずれも2026年9月9日に各運輸局サイトで確認しました。

一方、次の項目は東北と中部で同じでした。

なお、一般貨物の許可の標準処理期間は、東北運輸局では3〜5か月とされています(東北運輸局公示第128号)。中部運輸局の標準処理期間は今回確認していないため、両局が同じかどうかは分かりません。

所要資金の考え方(東北運輸局)

東北運輸局公示第39号の資金計画は、次の合算額を「事業開始に要する資金」としています。

自己資金はこの所要資金以上の額が必要で、原則として当該申請事業に係る預貯金で見ます(処分権者の判断により預貯金以外の流動資産を含められる場合があります)。しかも申請日以降、許可日までの間、常時確保されていることが条件です。申請時にだけ残高を用意しても通らない設計になっています。

ここで一つ注意点があります。細部取扱(東自貨第242号)は令和元年(2019年)10月10日付けのままで、その後4回行われた公示の改正に追いついていません。実際、公示本文は自賠責保険料を「1か月分」とする一方、細部取扱の様式2は「自賠責保険、任意保険の1年分」と書いており、記載が一致していません。

また、東北の「1か年分」と中部の「1か月分」の差が、局ごとの裁量差なのか、参照した公示の版の新旧差なのかは、今回の調査では特定できませんでした(中部運輸局公示第277号のPDFは最終改正日を文面から確認できませんでした)。実際の運用は、岩手運輸支局に直接確認するのが確実です。

更新審査 に備えて、記録は何年残すのか

更新審査 で帳票の提出や提示を求められるかどうかは、現時点では分かりません。ただ、貨物自動車運送事業輸送安全規則などが定める法定の保存期間は現行制度の話であり、いま確認できます。

保存期間記録根拠条文
1年点呼記録簿輸送安全規則 第7条第5項
業務の記録(運転日報)同 第8条
運行記録計による記録(タコグラフ)同 第9条
運行指示書およびその写し(運行の終了の日から起算)同 第9条の3第4項
点検整備記録簿道路運送車両法 第49条第3項(保存期間は国土交通省令に委任)/自動車点検基準(昭和26年運輸省令第70号)第4条
実運送体制管理簿(運送が完了した日から起算)貨物自動車運送事業法 第24条の5第1項
3年事故の記録輸送安全規則 第9条の2
運転者等台帳(運転者でなくなった日から起算)同 第9条の5
従業員に対する指導及び監督の記録同 第10条
5年健康診断個人票労働安全衛生規則 第51条
賃金台帳等(当分の間3年)労働基準法 第109条/当分の間3年とするのは同法附則 第143条第1項

ここで気づくことがあります。更新の周期は5年ですが、法定の保存期間は多くが1年か3年です。先行して更新制になった貸切バスでは、通達で5年分の実績を書面にして提出させる仕組みが取られています(本シリーズ第3回で扱います)。トラックで同じ形になるかは未定ですが、周期と保存期間にずれがあること自体は、いま押さえておいて損はありません。

なお、実運送体制管理簿は令和7年(2025年)4月1日に義務化された比較的新しい記録です。制度の内容は「【令和7年改訂】改正貨物自動車運送事業法のポイント(書面化・実運送体制管理簿)」で解説しています。

「指導及び監督の記録」の中身

表の3年の欄にある「従業員に対する指導及び監督の記録」について、もう少し開いておきます。ここは後で触れる岩手の巡回指導で、指摘の多い項目だからです。

輸送安全規則 第10条第1項は「国土交通大臣が告示で定めるところにより」と書いており、指導の中身は告示側にあります。告示の名称は「貨物自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う指導及び監督の指針」(平成13年8月20日 国土交通省告示第1366号)。最終改正は令和6年国土交通省告示第1193号で、令和7年(2025年)4月1日から施行されています。

この告示の第一章「2 指導及び監督の内容」に、すべての運転者に対して指導すべき内容が12個並んでいます。現場では「法定12項目」と呼ばれることが多いのですが、これは通称で、告示上の呼び方ではありません。条文の「第一号」から「第十二号」でもなく、告示の第一章2の(1)から(12)です。

  1. 事業用自動車を運転する場合の心構え
  2. 事業用自動車の運行の安全を確保するために遵守すべき基本的事項
  3. 事業用自動車の構造上の特性
  4. 貨物の正しい積載方法
  5. 過積載の危険性
  6. 危険物を運搬する場合に留意すべき事項
  7. 適切な運行の経路及び当該経路における道路及び交通の状況
  8. 危険の予測及び回避並びに緊急時における対応方法
  9. 運転者の運転適性に応じた安全運転
  10. 交通事故に関わる運転者の生理的及び心理的要因並びにこれらへの対処方法
  11. 健康管理の重要性
  12. 安全性の向上を図るための装置を備える事業用自動車の適切な運転方法
更新審査に関わる運転者への指導は2種類。全員に毎年やる12項目と、事故を起こした運転者・新たに雇い入れた運転者・65歳以上の運転者だけが対象の特別な指導があることを示した図

図:全員に毎年やる12項目と、対象者だけの特別な指導は別の仕組み

告示の第一章の柱書は、これらを「毎年実施し、その日時、場所及び内容並びに指導及び監督を行った者及び受けた者を記録し、かつ、その記録を営業所において3年間保存する」と定めています。時間数の定めはありません。「年に何時間」という法定要件は存在しないので、そう書かれた情報があれば根拠を確かめたほうがよさそうです。

規則 第10条第2項は、これとは別に特別な指導の対象を3つ挙げています。事故を引き起こした者、運転者として新たに雇い入れた者、65才以上の高齢者です。ただし告示側の定義は規則より狭く、事故惹起運転者については、死者または重傷者を生じた事故のほか、軽傷者を生じた事故は「当該事故前の3年間に交通事故を引き起こしたことがある」場合に限られます。条文だけを見て「死傷事故を起こしたら全員が対象」と判断すると、範囲を取り違えます。

特別な指導には時間数の定めがあります。一般貨物自動車運送事業の場合、事故惹起運転者は法令等・事故事例の分析など5項目で合計6時間以上(安全運転の実技は「可能な限り実施」で、この6時間には含まれません)。初任運転者は上の12項目の指導が15時間以上、これに加えて安全運転の実技が20時間以上です。高齢運転者については時間数の定めがなく、適齢診断の結果を踏まえて「運転者が自ら考えるよう指導する」とされています。

適性診断も対象ごとに分かれます。事故惹起運転者は特定診断Ⅰまたは特定診断Ⅱ、初任運転者は初任診断、65才以上は適齢診断を、65才に達した日以後1年以内に1回、その後3年以内ごとに1回受診させることになっています(出典:国土交通省 指導及び監督の指針貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈及び運用について。2026年9月時点)。

もうひとつ、見落としやすい定めがあります。告示は、運転者を新たに雇い入れたときに自動車安全運転センターが交付する無事故・無違反証明書または運転記録証明書等により、雇い入れる前の事故歴を把握することを求めています。解釈運用通達によれば、把握する期間は少なくとも過去3年間で、対象となる事故は事業用自動車によるものに限りません。自家用車での事故も含めて確認することになります。

岩手の巡回指導は、いま何を指摘されているか

巡回指導は、貨物自動車運送事業法第39条に基づき、地方貨物自動車運送適正化事業実施機関が行う指導です。岩手県では、公益社団法人岩手県トラック協会内に置かれた岩手県貨物自動車運送適正化事業実施本部が担っています。

指導員2人1組で事業所を訪問し、38の指導項目と13の自主点検項目を確認します。監査と違って原則として事前に案内文書が郵送されます。38項目は7つの分類に分かれています。

ここまでの項目数・実施体制の出典は、全日本トラック協会および地方貨物自動車運送適正化事業実施機関「適正化事業の概要」(2023年3月版)と、近畿運輸局の資料(2025年7月)です。岩手県の実施本部が公表した資料ではありません。実際の運用が岩手で同じかどうかは、資料の上では確認していません。

岩手県トラック協会の令和7年度(2025年度)事業経過報告によると、令和7年度の巡回指導は390事業所に対して実施されました。総合判定の結果は次のとおりです。

総合判定ABCDEその他
令和7年度(岩手)184143295128390

※「その他」には特別巡回と霊きゅう事業者への個別指導が含まれます。出典:岩手県トラック協会「令和7年度事業経過報告並びに決算(案)の承認について

総合評価は38項目の「適」の割合で決まります。今回確認できたしきい値はD=「適」の割合が60%以上70%未満、E=60%未満までで、出典は神奈川県貨物自動車運送適正化事業実施機関のウェブページ(2023年4月20日掲載)です。国土交通省や全日本トラック協会が示した基準文書ではなく、岩手県の実施本部の運用を示すものでもない点にご留意ください。A・B・Cのしきい値を示した公的資料は見つけられませんでした。一部の解説サイトには「A=90%以上」といった記載もありますが、根拠となる一次資料を確認できなかったため、この記事では採りません。

また、重点指導項目(9項目)にひとつでも「否」があると総合評価が1段階引き下げられる、という運用も同じ神奈川県のページに記載がありますが、国土交通省や全日本トラック協会の基準文書では確認できませんでした。9項目の内訳も同様です。

未実施率が高い項目(令和7年度〈2025年度〉・岩手)

順位指導項目未実施率
1運行指示書の作成・指示・携行・保存は適正か21.6%
2特定の運転者に対して特別な指導を行っているか20.9%
3過労防止を配慮した勤務時間・乗務時間を定め、乗務割が作成され、休憩・睡眠の時間が適正に管理されているか20.2%
4点呼の実施およびその記録・保存は適正か13.5%

出典:岩手県トラック協会 令和7年度(2025年度)事業経過報告

ワースト1の運行指示書は、5事業所に1事業所以上で指摘されています。3位の勤務時間・乗務時間の管理は、改善基準告示(自動車運転者の労働時間等の改善のための基準)や連続運転時間の扱いに直結する項目です。連続運転と休憩の考え方は「トラックの430(ヨンサンマル)休憩とは?」で整理しています。運行管理者の職務そのものについては「運行管理者(貨物)とは?」もあわせてご覧ください。

巡回指導の頻度は原則2年に1回が目標ですが、D・E評価を受けた事業所は半年ごとの巡回になります。改善報告がない場合や、3回続けてD・E評価となった場合は運輸支局へ報告され、監査につながる運用です。さらに、巡回指導で著しい法令違反が確認された場合の「速報」制度があり、対象は次の3類型とされています。

ただし、この3類型の出典は国土交通省の資料で、掲載されているデータは平成28年(2016年)12月末が最新です。約10年前の資料であり、現在の運用がそのままかどうかは確認できていません。

違反点数制度と、岩手の実データ

監査で法令違反が確認されると、行政処分の別表に従って処分日車数が決まり、そこから違反点数が付きます。根拠は局長通達「貨物自動車運送事業者に対する行政処分等の基準について」(最終改正 令和7年〈2025年〉2月28日、令和7年4月1日施行)です。

項目内容
点数の付き方処分日車数10日車までごとに1点
累積期間3年間(局長通達3(4)ただし書の①〜④をいずれも満たす場合は2年間。下記参照)
累計の単位事業者ごと、管轄区域(地方運輸局)単位
20点超本省および地方運輸局において事業者名を公表
51点以上80点以下当該管轄区域内のすべての営業所が事業停止(3日)
81点以上許可の取消し
違反点数が積み上がると、20点超で事業者名が公表され、51から80点で管内の全営業所が事業停止、81点以上で許可の取消しになることを示した階段の図

図:点数が積み上がるほど処分は重くなり、81点以上で許可の取消しに至る

累積期間の3年が2年に短縮されるのは、局長通達3(4)ただし書の①〜④をいずれも満たす場合です。①処分日以前2年間に行政処分を受けていないこと、または違反行為日に安全性優良事業所(Gマーク)の認定を受けていること。②所要の措置を履行し、2年間処分を受けていないこと。③2年間事故を起こしていないこと。④2年間悪質な違反行為がないこと。Gマークの認定は①の選択肢の一方であり、Gマークがあれば自動的に2年になる、という読み方はできません。

もうひとつ、誤解されやすい点があります。輸送の安全確保命令は、累積20点超だけで発動するものではありません。発動基準(「貨物自動車運送事業法に基づく輸送の安全確保命令の発動基準について」国自総第120号・国自貨第29号、最終改正 令和7年〈2025年〉2月28日)1.(1)は、累積点数が20点を超える事業者であることに加えて、その行政処分の日から3年以内に、同一の地方運輸局の管轄区域内の営業所に係る輸送の安全確保に係る違反行為に伴い死亡事故または重傷事故を引き起こした場合、という要件を置いています。20点超で公表の対象になることと、命令が出ることは別の話です。

この点数が、東北ではどう動いているか。東北運輸局が公表している「令和8年度第1四半期分」の資料によると、令和8年(2026年)6月末時点で、東北運輸局管内には累積違反点数が20点を超える事業者が11者あり、そのうち複数が岩手県内の事業者です。

また、令和7年度(2025年度)に行政処分等を受けた事業者数は、岩手運輸支局管内で次のとおりでした。

事業区分車両使用停止警告
一般貨物自動車運送事業17件15件2件
貨物軽自動車運送事業53件47件6件

出典:東北運輸局自動車交通部自動車監査官「法令違反に対する行政処分等の状況について(東北運輸局集計)【令和7年度分】」および同【令和8年度第1四半期分】

数字の受け取り方には注意が必要です。岩手県内の一般貨物自動車運送事業者数そのものを示す一次資料は確認できませんでしたが、母数の目安になる記載はあります。岩手県トラック協会の令和7年度(2025年度)事業経過報告は、Gマークの進捗について「県内の全事業所(970事業所)の約35.7%」と記しています。同報告によれば、同協会の総正会員数は令和7年度末(令和8年〈2026年〉3月31日現在)で618事業者、令和7年度の巡回指導実施は390事業所です。いずれも一般貨物の事業者数そのものではないため、17件という数を評価する材料としては限界があります。

巡回指導や違反点数は、 更新審査 に直接ひびくのか

ここが、この記事でいちばん慎重に書きたいところです。

巡回指導の評価や違反点数が許可更新審査 に直接連動することを定めた省令・告示・通達は、2026年9月9日時点で存在を確認できませんでした。「巡回指導でD評価だと更新審査 を通らない」といった説明は、いま根拠を持ちません。

言えるのは、次の重なりまでです。

参考として、現行制度でも巡回指導の評価が行政の判断に組み込まれている場面はあります。東北運輸局公示第39号 Ⅲ.1(3)は、増車などの事業規模の拡大について、申請日前1年間に巡回指導の総合評価「E」を受けている場合や、当該営業所の累積違反点数が12点以上である場合等、法令遵守が十分でないと認められるときに、許可基準に準じた審査を行うとしています。

一方、3か月前時点の配置車両数に対して30%以上の増車については、これとは別の項で、許可基準による審査の対象と定められています。公示は「準じた審査」と「による審査」を書き分けており、三つの場合が同じ扱いというわけではありません。

ただしこれは増車についての定めであり、 更新審査 への準用を示す資料はありません。「同じ発想が更新にも持ち込まれるかもしれない」という推測はできますが、推測は推測として扱うべきものです。

条番号が変わっています

条文を自分で確認しようとする方に、ひとつ落とし穴があります。令和6年法律第23号により、貨物自動車運送事業法の条番号が繰上げ・繰下げされました。

現行見出し改正前
第15条輸送の安全第17条
第25条事業の適確な遂行第24条の4

問題は、行政処分の別表の条番号が、この繰上げ・繰下げに追いついていないことです。別表では名義貸しが「第27条第1項」と記載されていますが、現行の名義貸しの禁止は第28条です。同じく別表の「第25条=公衆の利便を阻害する行為」は、現行では第26条にあたります。局長通達の本文と別表の間でも、名義貸しの条番号が第28条と第27条で食い違っています。

実際、東北運輸局が公表している累積違反点数の一覧を見ると、同じ「輸送の安全の確保事項遵守違反」でも、令和7年(2025年)3月の処分は「法第17条第4項」、令和8年(2026年)2月・6月の処分は「法第15条第4項」と表記されています。処分の時期によって条番号の表記が混在しているわけです。

他所の解説記事や書籍には、古い条番号のまま書かれたものが残っています。条文にあたるときは、e-Gov法令検索などで現行条文をあわせて確認されることをおすすめします。

役員法令試験は、 更新審査 でも課されるのか

新規許可の手続きで最も知られているのが、役員法令試験です。東北運輸局では公示第19号(平成20年5月15日制定/最終改正 令和8年〈2026年〉7月1日 公示第39号)が実施要領を定めています。

※ ここでいう「公示第39号」は、公示第19号を最終改正した公示の番号です。前半で触れた許可基準の東北運輸局公示第39号(平成29年制定)とは別の公示ですので、混同しないようご注意ください。

13番目の法令名は、令和8年(2026年)7月1日改正後の公示第19号 5.(1)⑬の表記です。かつての「下請代金支払遅延等防止法」にあたる法律ですが、名称が改まっていますので、条文集や参考書を探すときはご注意ください。

では、更新のときにも法令試験があるのか。現行の公示では、更新は試験の対象になっていません。東北運輸局公示第19号が試験の対象としているのは、経営許可申請・譲渡譲受・合併分割・相続認可申請の4類型で、令和8年(2026年)7月1日改正版でも許可の更新は含まれていません。本省通達(国自貨第122号)も同様です。

ただし、更新制の施行に合わせて公示が改正される可能性はあります。法令試験はそもそも法律上の制度ではなく通達・公示に基づく運用であり、更新に課すかどうかは、その改正で決められる位置にあります。だからこそ、確定情報が出るまでは「将来も対象外である」とは言えません。

当社の受け止め

第1回でも書いたとおり、株式会社石名坂は土木工事と砕石・砂利販売を行う会社で、運搬は自家用(白ナンバー)のダンプです。今回の 許可更新 審査 の直接の対象ではありません。対象になるのは、一般貨物自動車運送事業の許可を持つ関連会社、有限会社石名坂商事のほうです。

それでも、この回を書いておきたかった理由があります。今回並べた項目のほとんどは、更新制が始まるかどうかにかかわらず、いま現に守るべきことだからです。点呼の記録も、運行指示書も、勤務時間の管理も、保存期間も、すべて現行法の義務です。更新制は、それを5年ごとに見直す機会を法律の側に作るという話であって、義務そのものを新設するものではありません。

岩手の巡回指導で運行指示書の未実施率が21.6%だという数字は、裏を返せば、多くの事業所が同じところでつまずいているということです。制度が動く前にできることがあるとすれば、まずは自社の記録が法定の期間ぶん残っているかを確かめるあたりからだと考えています。

当ブログでは、 更新審査 に関する省令・通達・公示が出た時点で、その内容をあらためて整理して共有します。現時点で「更新審査 ではこれが必要になる」と断定的に書かれた情報を見かけたら、根拠となる一次資料が示されているかを確認されることをおすすめします。

なお、本記事は2026年9月9日時点で公表されている一次資料をもとに整理したものです。所要資金の計上方法など、公示と細部取扱で記載が一致していない箇所もあります。自社の許可について個別の取扱いを確認される場合は、所管の運輸支局(岩手県内の事業者であれば岩手運輸支局)にお問い合わせいただくのが確実です。

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