「 気候変動 適応ビジネス 」とは?建設業の2050年と地域の守り手【最終回】

結論からお伝えします。災害は増え、猛暑は工期のルールを変え、それでも「直す人」はこの28年で約3割減りました。だからこそ、気候変動の時代に建設業は「地域の守り手」としてますます必要とされる——これが全5回シリーズの結論です。国は2026〜2030年度の国土強靱化(災害に強い国づくり)に「おおむね20兆円強程度」の事業規模を掲げ、その多くはインフラを守り、直し、強くする仕事です。第4回でご紹介した「適応ビジネス」の筆頭がインフラ強靱化である理由を、最終回の本稿で正面から掘り下げます。

前回の第4回「 気候変動 経済影響 」は?保険・製造業・観光の2050年では、損失の裏側に年間最大50兆円規模の適応コスト(=適応ビジネスの市場機会)があるという試算をご紹介して締めくくりました。シリーズ最終回となる今回は、私たち建設業の仕事そのものがどう変わるのかを、工事需要・猛暑・除雪・脱炭素・担い手の5つの視点で見ていきます。

「 気候変動 適応ビジネス 」と建設業の関係を示すインフォグラフィック。国土強靱化中期計画(2026〜2030年度・事業規模おおむね20兆円強程度)やWBGT31以上の猛暑日の工期算入で仕事の需要は増える一方、建設業就業者は1997年685万人から2025年478万人に減少、岩手の生産年齢人口も2050年に45.1%減の推計。だから建設業は「地域の守り手」としてますます必要という結論を図解
需要は増える×担い手は減る——だから建設業は「地域の守り手」。本記事の結論を1枚にまとめました(数値の出典は文末の参考・出典をご覧ください)

20兆円の適応需要——国土強靱化の5年計画

2025年6月6日、国は初めての「国土強靱化実施中期計画」を閣議決定しました。期間は令和8〜12年度(2026〜2030年度)、事業規模は「おおむね20兆円強程度」とされています。内訳は、堤防やダムなどの防災インフラに約5.8兆円、水道・道路・通信などライフラインの強靱化に約10.6兆円、デジタル・新技術の活用に約0.3兆円、官民連携に約1.8兆円、地域防災力の強化に約1.8兆円という5本柱です。前身の「5か年加速化対策」(2021〜2025年度、実績約15.6兆円)から切れ目なく続く計画で、川の流域全体で水を受け止める「流域治水」の考え方も明記されています。流域治水プロジェクトは2021年3月に全国109すべての一級水系で策定済みです。

岩手県でも、国と同じ令和8〜12年度を期間とする第3期の国土強靱化地域計画が進められています。北上川の上流では、国・県・市町村が協働する「北上川上流流域治水プロジェクト」が進行中で、盛岡北圏域では遊水地(洪水時に水を一時的に受け止める土地)の整備と河道改修が行われています。前提記事でご紹介したとおり、2℃上昇で降雨量は1.1倍、洪水の頻度は2倍になると試算されており、こうした治水工事は今後も長く続く「適応の仕事」だと考えられます。

猛暑が工期のルールを変えた

暑さは、現場の働き方のルールそのものを変えつつあります。国土交通省は2023年、工期設定の指針を改定し、WBGT(暑さ指数。気温・湿度・日差しを組み合わせた熱中症リスクの指標)が31以上となる時間を「猛暑日」として集計し、雨の日と同じように「作業できない日」として工期に算入する仕組みを導入しました。想定を超えた場合は工期の変更や増加費用の負担も認められます。さらに2025年12月には「猛暑対策サポートパッケージ」が発表され、2026年の夏には国の直轄工事で夏の一定期間に工事を休む「夏季休工」を可能にする工期設定が試行される予定です。

背景には、2025年6月からWBGT28以上(または気温31℃以上)の作業に熱中症対策が義務化されたこと、そして2024年に建設業の熱中症死亡者が10人と全業種で最多だったことがあります(詳しくは前提記事で解説しています)。現場では冷房を備えた「快適トイレ」の標準化も進み、中小企業の暑さ対策設備を支援する国の補助制度もあります。空調服やWBGT計が「あれば便利な道具」から「現場の標準装備」に変わった——それが今の建設現場です。

除雪はなくならない、けれど

「温暖化なら除雪は要らなくなるのでは?」と思われるかもしれません。確かに岩手の冬日(最低気温0℃未満の日)は2℃上昇で21日、4℃上昇で69日減ると予測されています。しかし、気温が上がると大気中の水蒸気が増え、日本海の海面水温の上昇も加わって、寒波が来たときにはJPCZ(日本海寒帯気団収束帯。雪雲が集中して発達する帯)に水蒸気が集まり、豪雪がかえって激しくなる可能性が研究者から指摘されています。新潟大学などの研究チームは2022年、洋上観測でこの仕組みを裏づけました。「降る日は減るが、降るときはドカッと降る」——これが将来の雪の姿かもしれません。

一方で、国土交通省は除雪オペレーターの高齢化と減少に警鐘を鳴らしています。中山間地には除雪を担う業者が1社しかない地域もあり、その1社が撤退すれば除雪体制の維持が難しくなります。岩手県では土木センターと県建設業協会が若手除雪オペレーターの育成訓練を行っており、当社も除雪業者として冬の道路を守る側にいます。除雪は「なくならない適応の仕事」であり、担い手を絶やさないことがそのまま地域の防災力になります。

建設業の脱炭素——道具と材料が変わる

適応と並ぶもう一つの柱が緩和(温室効果ガスを減らす対策)で、建設業では道具と材料の両方が変わり始めています。国土交通省は2023年10月に「GX建設機械認定制度」を開始し、初回の2023年12月には電動ショベルなど4社15型式が認定されました。同じく国交省の「i-Construction 2.0」は、自動化・省人化によって2040年までに建設現場の省人化3割(生産性1.5倍)を目指す方針で、機械の自動化は猛暑下の人力作業を減らす暑さ対策にもつながります。材料では、鹿島建設などが開発したコンクリート「CO2-SUICOM(スイコム)」が、製造時のCO2を1立方メートルあたり197kg減らしたうえで固まるときに109kgを吸収する「カーボンネガティブ」(出すより吸う方が多い状態)を実現し、大阪・関西万博でも試験施工されました。

そして、当社の本業に直結するのが再生材です。グリーン購入法(国や自治体が環境にやさしい物品を優先的に調達する法律、2001年全面施行)では、再生砕石や再生アスファルトが公共工事の特定調達品目に指定されています。当社が製造・販売する再生砕石は、国の環境調達の枠組みに位置づけられた資材であり、コンクリートがらを砕いて道路の路盤材などに生まれ変わらせる「地域の資源循環」の一部です。

一番の課題は「人」

ここまで需要と技術の話をしてきましたが、最大の課題は「人」です。建設業の就業者は1997年の685万人をピークに、2025年には478万人まで約3割減りました。しかも55歳以上が約37%を占める一方、29歳以下は約12%にとどまります(総務省労働力調査に基づく日建連の整理)。岩手県はさらに厳しく、生産年齢人口(15〜64歳)は2020年の66万人から2050年には36万人へと45.1%減る見込みで、全国平均より減少幅が大きいと推計されています。

建設業は、道路啓開(災害時に道路をふさぐがれきをどけて通れるようにする作業)や災害復旧、除雪を担う「地域の守り手」と位置づけられています。洪水の頻度が2倍になると予測される一方で、守り手は3割減った——この2つを並べると、答えは自然に見えてきます。堤防や遊水地と同じくらい、いやそれ以上に、「直せる人を絶やさないこと」自体が地域の最大の適応策なのです。

シリーズを終えて

全5回にわたってお届けした「2050年の気候変動」シリーズは、今回で最終回です。各回の要点を振り返ります。

当社は従業員18名の小さな会社ですが、砕石・土木工事・ダンプ運搬・除雪という地域インフラの現場に立ち続けること、そしてIES(いわて環境マネジメントシステム)や脱炭素経営の認定に取り組み続けることが、この記事で書いてきた「適応」と「緩和」の両方への、私たちなりの答えだと考えています。読者のみなさんにとっても、気候変動は遠い未来の話ではなく、食卓・電気代・保険料・地元の道路につながる「自分ごと」です。このシリーズが、そのことを考えるきっかけになれば幸いです。最後に個人の意見としては、最終的には人間や生物は地下化を利用することになると思います。維持費が少ないことと、地下化の温度が一定の強みとなるのではないかと思ってます。

まとめ

砕石・砂利・再生砕石のご用命、土木工事や除雪のご相談は、TEL:019-638-7521までお気軽にお問い合わせください。

※本稿は2026年8月時点の公表資料に基づく時点情報です。国土強靱化の事業規模や工期・休工の運用、補助制度の内容は今後の制度設計や予算により変更される可能性があります。また、将来の雪や災害に関する記述はシナリオ(温暖化の進み具合の想定)や研究段階の見解を含みます。最新の情報は各機関の公式発表をご確認ください。

参考・出典

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