「 気候変動 食卓 」はどうなる?お米・パン・チョコの2050年

結論からお伝えします。2050年の世界の食料需要は、農林水産省の見通しで2010年比の約1.7倍に増えると予測されています。ところが、その食料を育てる側の環境は、気候変動によって不安定になっていく可能性があります。「需要は増えるのに、供給は不安定になる」——この構図が、私たちの食卓を少しずつ変えていくと考えられます。しかも、その変化はもう始まっています。

当社では先日、「 2050年の気候変動 」予測は?岩手と建設現場への影響という記事で、気温や雨・雪がどう変わるのかをご紹介しました。今回からは、その続編として全5回のシリーズで「2050年の暮らし」を掘り下げていきます。第1回のテーマは「食卓」。お米・パン・チョコレート・魚と野菜の順に、公的機関の予測数値と実際に起きている変化を見ていきます。

「 気候変動 食卓 」への影響をまとめたインフォグラフィック。2050年の世界食料需要は2010年比約1.7倍に増える一方、供給は不安定に。お米は白未熟粒が今世紀半ばに約20%(2023年産新潟コシヒカリの一等米比率3.6%の実例)、小麦は83%を米・加・豪3か国に依存、カカオは価格2倍超で主産地の約9割が栽培適性低下の可能性、ブリとミカンの適地は北上
2050年の食卓に予想される変化のまとめ。需要は約1.7倍に増える一方、お米・パン・チョコ・魚と野菜のそれぞれに供給リスクが(出典:農林水産省・農研機構・IPCCほか、詳細は本文参照)

お米——「一等米」が減っていく

お米は、収穫後の検査で一等・二等・三等などの等級がつけられます。「一等米」はその最上位で、見た目や粒のそろい方が評価の基準です。気温が高いと増えるのが「白未熟粒(しろみじゅくりゅう)」、つまりデンプンが十分に詰まらず白く濁ったお米です。農林水産省の解析では、お米は出穂(しゅっすい=穂が出ること)後20日間の日平均気温が約26℃を超えると、この白未熟粒が増えるとされています。

農研機構が2021年7月に公表した予測では、対策を取らない場合、白未熟粒の発生率は全国平均で今世紀半ばに約20%、今世紀末には約40%に達するとされています(RCP2.6・RCP8.5シナリオによる解析)。さらに温暖化が最も進むRCP8.5シナリオでは、収量そのものも今世紀末に約2割減ると予測されています。

これは遠い未来の話ではありません。記録的な猛暑となった2023年産では、新潟県のコシヒカリの一等米比率が3.6%(速報値)まで落ち込みました。前年は79.2%でしたから、たった1年での激変です。全国の一等米比率も59.6%(速報値)と、過去20年で最低の水準でした。2024年産の新潟は78%まで回復しており、「毎年必ず悪い」のではなく「年による振れ幅が大きくなっている」のが実態といえます。米どころ岩手のお米への影響と高温に強い品種の話は、第3回で詳しく取り上げます。

パン——原料の8割超が3か国頼み

パンや麺の原料である小麦は、日本の自給率が約17%(カロリーベース、令和5年度)しかなく、8割超を輸入に頼っています。輸入先はアメリカ約40%・カナダ約39%・オーストラリア約21%で、この3か国でほぼ100%を占めます。つまり、海外の天候不順がそのまま日本のパンの値段に響く構造です。

IPCC(国連の気候変動に関する政府間パネル)の「土地関係特別報告書」(2019年8月)は、SSP2・RCP6.0という中位のシナリオで、2050年の穀物価格が中央値で7.6%上昇すると試算しています。幅は1〜23%で、「最大23%」はあくまでその上限値です。また同報告書は、気温が2℃以上上昇すると低・中緯度地域で穀物の生産性が下がるとしており、輸入元のひとつであるオーストラリアの干ばつも懸念されています。パン・うどん・お菓子と、小麦は食卓のあらゆる場所にあるだけに、影響の裾野は広いといえます。

チョコレート——「2050年問題」は始まっている

チョコレートの原料カカオは、ガーナとコートジボワールの2か国で世界の約6割が生産されています。2013年の国際研究(CIAT)では、この両国の栽培地294地点のうち約89.5%で、2050年には栽培への適性が低下する可能性があるとされました。主産地の約9割が「カカオを育てにくい土地」になるかもしれない、という研究です。

価格面では、2024年12月16日にニューヨークのココア先物価格(将来の売買価格を先に取り決める取引の価格)が1トン11,839ドルの史上最高値をつけ、1年で2倍超になりました。ただし、この高騰は天候不順に加えて違法採掘や病害など複数の要因が重なった結果とされており、気候変動だけが原因ではありません。それでも「板チョコが今の感覚では買えなくなる日が来るかもしれない」という予測が、価格の面では一足先に現実味を帯びてきています。

魚と野菜——食卓の顔ぶれが変わる

気象庁によると、日本近海の海面水温はこの約100年で1.36℃上昇しており(2025年までの解析)、これは世界全体の平均(+0.63℃)の約2倍のペースです。その影響で魚の「住所」が変わりつつあります。たとえばブリは、2000年以前は北海道でほとんど獲れませんでしたが、2011年に7,146トン、2020年には15,457トンまで漁獲が増えました。水産庁の白書は、その主な要因を海水温の上昇と明記しています。一方、有明海や瀬戸内海の海苔は、高水温による「色落ち」(海の栄養不足で黒い色が抜ける現象)で生産量が減っています。

野菜や果物も同じです。温州ミカンの栽培に適した気温は年平均15〜18℃とされ、農研機構の予測では今世紀半ばに適地が北陸以南の日本海側や内陸へと北上するとされています。トマトは日平均気温が25℃を超えると花粉の働きが弱まり、実がつきにくくなる(着果率が下がる)ことが知られています。盛岡のスーパーに並ぶ魚や野菜の顔ぶれ、そして「どこ産か」が、少しずつ入れ替わっていく可能性があります。三陸の魚や岩手のリンゴへの影響は、第3回「岩手の農林水産業」で詳しくお伝えします。

私たちにできること

大きな数字の話が続きましたが、食卓からできることもあります。

当社も、独自の環境活動「IES」や脱炭素経営の取り組みを通じて、盛岡の地でCO2削減を進めています。土木工事や砕石・ダンプ運搬、冬の除雪といった私たちの仕事は、食料を運ぶ道路や農地を支える仕事でもあります。食卓の未来を守ることと、地域のインフラを守ることは、地続きだと考えています。次回・第2回は「くらしと健康の2050年」——熱中症・電気代・保険料への影響を取り上げる予定です。

まとめ

砕石・砂利・再生砕石のご用命、土木工事や除雪のご相談は、TEL:019-638-7521までお気軽にお問い合わせください。

※本稿は2026年8月時点の公表資料に基づく時点情報です。気候変動の予測値はシナリオ(温暖化対策の進み具合の想定)や研究の進展によって変わる可能性があります。最新の情報は各機関の公式発表をご確認ください。

参考・出典

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