「 気候変動 くらし 」への影響は?2050年の熱中症・電気代・保険料

「 気候変動 くらし 」への影響を結論からお伝えします。環境省の資料によると、暑さの進行だけを考えた場合、2050年の熱中症による死亡者数は現在の約2倍になると推計されています。そして、くらしの変化——熱中症警戒アラートの急増、火災保険料の引き上げ、電気の使われ方の変化——は、2050年を待たずにもう始まっています。

前回の第1回「 気候変動 食卓 」はどうなる?お米・パン・チョコの2050年では、お米やチョコレートなど食べものの未来を取り上げました。シリーズ第2回のテーマは「くらしと健康」です。熱中症・夏の風景・電気代・保険料の順に、公的機関の予測数値と実際に起きている変化を見ていきます。

「 気候変動 くらし 」と健康への影響をまとめたインフォグラフィック。環境省推計では2050年の熱中症死亡は現在の年約1,300人から約2倍に。盛岡は101年ぶりタイの37.2℃・猛暑日9日を記録、熱中症警戒アラートは4年で約3倍の年1,749回、救急搬送は初の10万人超。電力ピークは冬から夏へ移り冷房28℃設定で年約940円節約、火災保険の参考純率は過去最大の13.0%引き上げで水災料率は市区町村5区分に細分化
「くらしと健康の2050年」要約図——熱中症・盛岡の暑さ・電気代・火災保険の主な数値(出典: 環境省、気象庁、総務省消防庁、資源エネルギー庁、損害保険料率算出機構の公表資料より作成)

熱中症——2050年の推計と「今」の実績

環境省の熱中症対策小委員会(2026年4月)に示された将来推計では、2050年の熱中症死亡者数が3つのシナリオで試算されています。暑さの進行だけを考えた場合(人口は今のまま固定)は年間約2,600人と、基準となる現在(2019〜2023年平均の約1,300人)の約2倍。人口の変化だけを考えた場合は高齢者数の減少などにより約740人へ減少。両方を組み合わせた場合は約1,460人へ緩やかに増えるという内容です。つまり「暑さそのものは死亡リスクを2倍に押し上げる力を持つ」と読むことができます。

これは未来だけの話ではありません。熱中症による死亡は近年すでに年1,000人前後にのぼり、その約8割が高齢者です。地震や台風など自然災害の死者(年100〜200人程度)を上回ることから、「熱災害」という言葉も使われ始めています。救急搬送も2025年は5〜9月で100,510人と、初めて10万人を超えて過去最多になりました。65歳以上が57.1%を占め、発生場所は「住居」が最も多いのが特徴です。さらに長い目で見ると、国立環境研究所の情報基盤(A-PLAT)では、熱ストレスによる死亡が21世紀末に2倍以上、対策が進まないシナリオでは7倍超になるという推計も示されています。

盛岡も暑い——101年ぶりの37.2℃

「岩手は涼しいから大丈夫」とは、もう言えなくなってきました。2025年8月3日、盛岡は最高気温37.2℃を記録しました。これは1924年7月12日と並ぶ、101年ぶりのタイ記録です。2025年夏の盛岡は、猛暑日(35℃以上の日)が9日と平年より8.1日多く、真夏日(30℃以上の日)は58日と平年より38日も多くなりました。平年の盛岡の猛暑日は約1日ですから、様変わりといえます。日本全体でも2025年夏の平均気温は平年比+2.36℃で、統計開始以来最も高い夏でした。

見落とせないのは、環境省の資料で東北が「人口10万人あたりの熱中症死亡率が高い区分」に入っていることです。同資料は、対策は地域の状況に合わせて設計する必要があるとしています。涼しい地域ほど暑さへの備えが薄くなりがちだと考えると、盛岡に暮らす私たちにとって熱中症は、むしろ正面から向き合うべきテーマだといえます。

夏の風景が変わる——アラート・甲子園・祭り

2021年に運用が始まった「熱中症警戒アラート」は、暑さ指数(WBGT=気温・湿度・日差しを組み合わせた指標)が33以上と予測されたときに発表されます。発表回数は2021年度の613回から、2025年度には過去最多の1,749回へと、4年で約3倍に増えました。2024年からは、さらに上の危険度を知らせる「熱中症特別警戒アラート」や、誰でも涼みに入れる「クーリングシェルター」の制度も始まっています。

夏の行事も変わり始めました。夏の甲子園(全国高校野球)は2023年から試合中に「クーリングタイム」を設け、2024年には朝と夕方に試合を分ける2部制を3日間で初導入、2025年は6日間に拡大しています。お祭りでは、佐賀市の「佐賀城下栄の国まつり」が8月から5月へ開催時期を移し、熱中症の救急搬送が14人からゼロになりました。東京・足立の花火は7月から5月末へ、山形県の酒田の花火は8月から9月へ移っています。学校の管理下での熱中症も年間約5,000件発生しており、「夏の行事は真夏を避ける」という流れは今後も広がる可能性があります。

電気代——ピークが冬から夏へ

IEA(国際エネルギー機関)は、世界の冷房エネルギー需要が2050年に2016年比で約3倍になると予測しています。冷房の99%は電力で動くため、暑くなるほど電気の使われ方が変わります。産業技術総合研究所などの研究(2023年)では、気温が3℃上昇した場合、首都圏では1年で最も電気を使う「ピーク」が冬から夏に移り、夏の電力需給のひっ迫が頻繁になる可能性が示されました。以前の記事でご紹介したとおり岩手では冬日(氷点下の日)が減る予測もあり、「暖房が主役」だった北国の光熱費の構図も、冷房の比重が増す方向へ変わっていくかもしれません。

ここで強調したいのは、「電気代がもったいないからエアコンを我慢する」のは危険だということです。東京23区の令和2年夏の調査では、屋内で亡くなった方の約9割がエアコンを使っていませんでした。節約は設定温度の工夫で行うのが現実的です。資源エネルギー庁によると、冷房の設定を27℃から28℃にすると年間約30kWh・約940円の節約になるとされています。無理のない範囲で調整しつつ、暑い日はためらわず冷房を使うことが大切です。

保険料——水害リスクで値段が決まる時代

気候変動は、火災保険(水害や台風の被害も補償する住まいの保険)の値段にも影響し始めています。損害保険料率算出機構は2023年6月、各社が保険料を決める際の目安となる「参考純率」を全国平均で13.0%引き上げました。これは過去最大の引き上げ幅で、2024年10月以降の各社の商品に順次反映されています。あわせて、水災(洪水など水害)の料率が市区町村単位で5区分に初めて細分化されました。「住んでいる場所の水害リスクで保険料が変わる」時代が、すでに始まっているということです。

将来については、金融庁が2025年6月に公表したシナリオ分析(2100年に約2.9℃上昇する「現行政策」シナリオ)で、台風などの風災は1つの災害あたりの支払額が増え、水災は発生数・支払額とも増えると分析されています。上昇幅は水災の方が大きく、風災は住宅物件で、水災は企業物件で影響が大きい傾向とされました。金融庁は「保険料の引き上げを通じて、個人や企業への影響は避けられない」と指摘しています。なお、火災保険の契約期間も最長35年から10年(2014年)、5年(2021年)へと短くなってきました。先々のリスクを長期で約束することが難しくなっている表れといえます。

私たちにできること

今日からできる備えを3つ挙げます。

当社のような建設業では、2025年6月から職場の熱中症対策が義務化され、WBGTの計測などが現場の必須事項になっています。詳しくは以前の記事「 2050年の気候変動 」予測は?岩手と建設現場への影響でご紹介しました。盛岡の暑さと向き合いながら、土木工事・砕石・ダンプ運搬、そして冬の除雪で地域のくらしを支えることが、私たちの変わらない役割です。次回・第3回は「岩手の農林水産業」——リンゴ・お米・三陸の魚の未来を取り上げる予定です。

まとめ

砕石・砂利・再生砕石のご用命、土木工事や除雪のご相談は、TEL:019-638-7521までお気軽にお問い合わせください。

※本稿は2026年8月時点の公表資料に基づく時点情報です。気候変動の予測値はシナリオ(温暖化対策の進み具合の想定)や研究の進展によって変わる可能性があり、保険料などの制度・料率も今後見直されることがあります。最新の情報は各機関の公式発表をご確認ください。

参考・出典

前の記事へ戻る
次の記事へ戻る
前のページへ戻る