総合物流施策大綱とは?国が決めた物流の5年計画を、やさしく解説

コンビニに行けば、棚に物が並んでいます。注文したものは、翌日には届きます。当たり前のことのようですが、当たり前ではなくなりつつあります。

2026年3月31日、国は「総合物流施策大綱(2026年度〜2030年度)」を閣議決定しました。これから5年間、日本の物流をどうするかを決めた計画です。この記事では、そこに何が書いてあるのかを、なるべくやさしくご紹介します。

石名坂は盛岡で自社のダンプを持ち、砕石や残土を運んでいます。この計画に書かれていることは、他人事として読める内容ではありません。

総合物流施策大綱の要点。2030年度に約34パーセントの輸送力が不足する見込みで、そのうち約14パーセントは克服済み。大型ドライバーの年収は492万円で全産業平均の527万円より低く、労働時間は年2,484時間で全産業平均の2,052時間より長い。国は賃金と労働時間を全産業平均まで引き上げると定めた。
この記事の要点です。数字はすべて大綱の本文から採りました。

総合物流施策大綱とは、どういうものか

中身は「国が作った、物流の5年計画」です。3つだけ押さえれば十分です。

総合物流施策大綱とは何か。法律ではなく守らなくても罰則はないこと、内閣が正式に決めた閣議決定であること、1997年から数えて今回が8回目であることの3点を示した図。
法律ではありません。内閣が決めた、5年ごとの方針です。

なぜ、いま作り直したのか

きっかけは、ひとつの推計です。トラックドライバーの労働時間を減らすために何も手を打たなかった場合、2024年度に約14%、2030年度には約34%の輸送力が足りなくなる——そう見込まれていました。運びたい荷物の3分の1が運べない、ということです。

これが「物流の2024年問題」です。今回の大綱は、その後どうなったかを書いています。34%のうち14%分は概ね克服できた。残りはこれからだと。

2024年問題の進み具合。2030年度に足りなくなるはずだった輸送力34パーセントのうち、14パーセントは克服し、20パーセントがまだ残っている。ただし運ぶ荷物そのものも、2019年の28.4億トンから2024年の25.1億トンへ約12パーセント減った。
34%のうち14%分は克服。残りの20%が、これからの5年間です。

ただし大綱は、楽になった理由のひとつが「荷物が減ったこと」だとも認めています。営業用トラックが運んだ量は、2019年の28.4億トンから2024年は25.1億トンへ約12%減りました。努力だけで乗り切ったわけではありません。

5つの柱を、ひとことずつ

大綱は、やることを5つに分けています。原文は硬いので、意味をひとことにしました。

大綱が決めた5つのこと。1、無駄をなくす。2、頼む側の意識を変える。3、働く人の待遇をよくする。4、デジタルと脱炭素。5、災害と国際情勢に備える。
5つの柱。国だけでなく、荷主や消費者も当事者に含まれています。

注目したいのは2番です。運ぶ側だけの問題にしていません。荷物を出す会社も、受け取る私たちも、当事者として名指しされています。

2030年の目標を、数字で見る

大綱の末尾には、達成度を測る数字が並んでいます。分かりやすいものを抜き出しました。

項目いま2030年度
トラックの積載効率41.3%44%
ドライバーの荷待ち・荷役の時間年 約750時間年 625時間
大型ドライバーの年収492万円全産業平均(527万円)まで
大型ドライバーの労働時間年 2,484時間全産業平均(2,052時間)まで
15〜29歳が占める割合10.1%全産業並みに
自動運転トラック—1,000台
自治体でのドローン配送17件174件
宅配の「多様な受取方法」利用率25.6%50%程度
大綱の別表より抜粋。現状値の年次は項目によって異なります。
2030年度までの目標。大型ドライバーの年収を492万円から527万円へ、労働時間を年2,484時間から年2,052時間へ。いずれも全産業平均に合わせる。
賃金と労働時間を、全産業平均まで。今回いちばんの目玉です。

目を引くのは、賃金と労働時間を「全産業平均まで」と書いたことです。裏を返せば、いまは届いていない。年収で35万円ほど低く、労働時間は年400時間以上長い。それを5年で埋めると国が宣言しました。

では、決めたとおりに動いているのでしょうか。すでに、数字が出ています。

国土交通省が2026年7月10日に公表した調査によると、トラック運転者の1運行あたりの拘束時間は10時間13分。前の年の調査より1時間33分短くなりました。そのうち荷待ちや荷役にかかる時間は2時間2分で、こちらは1時間16分減っています。約3時間が、約2時間になったということです。

ただし、この「2時間2分」は1回の運行あたりの数字で、大綱の目標である「年750時間を年625時間へ」とは数え方が違います。並べて引き算はできません。それでも、現場の待ち時間が実際に縮んでいることは確かです。大綱は、紙の上だけの話ではありません。

高校生のあなたに、関係があること

受け取り方を選ぶだけで数字が動く。置き配、宅配ボックス、コンビニ受け取りの利用率を25.6パーセントから50パーセント程度へ引き上げる。配達員が同じ家へ二度行かずに済む。
受け取り方を選ぶ。それだけで、この数字に関われます。

ふたつあります。ひとつは今日からできることです。

宅配を「置き配」や「宅配ボックス」「コンビニ受け取り」にすると、配達員が同じ家へ二度行かずに済みます。大綱がこの利用率を25.6%から50%へ引き上げると書いているのは、そういう意味です。受け取り方を選ぶだけで、数字が動く側に入れます。

もうひとつは進路の話です。物流は「きつくて給料が安い」と言われてきました。その評判は、まちがいではありません。だからこそ国は、賃金と労働時間を全産業並みにすると書いた。いま変わろうとしている最中の業界です。自動運転トラック1,000台、ドローン配送174件という目標も、5年後にどんな仕事があるかを示しています。

盛岡で、ダンプを持つ側から見ると

ここまで国の数字を並べてきましたが、どれも全国の平均です。うちの現場と同じではありません。

たとえば荷待ち。国の調査では1運行あたり2時間2分ですが、建設現場のダンプは、ほとんど待ちません。プラントでの積み込みを含めても、いまのところ30分を超えることは、まずありません。掘って、積んで、運んで、降ろす。それが同じ現場で回っているからです。倉庫や工場の荷受け場に順番待ちで並ぶ、という形ではありません。

つまり、あの「2時間2分」は、別の業種の便が押し上げている数字です。同じ「トラック」「ドライバー」という言葉で語られていても、運ぶものが違えば、現場の風景はまるで違います。ここは、書いておきたいところです。

では他人事かというと、そうではありません。積載効率41.3%。うちの便も、帰りは空荷です。

これは、手を抜いているからではありません。たとえば、道路の舗装をやり直す工事。古い舗装を機械で削り取り、その削りカスをダンプに積んで、処分場へ運びます。では帰りに、新しいアスファルト(合材)を積んでくればいい——そうはいきません。

削ったあとに、クラック調査(ひび割れの調査)が入るからです。削ってみて初めて、下の傷み具合が分かる。その結果を見てから、どう直すかが決まります。ですから、削ったその日に合材を持っていくことは、まずありません。舗装を敷くのは、別の日になります。

工程がそうなっている以上、帰りの空荷は避けられません。「積載効率41.3%」という数字の裏には、こういう事情があります。運ぶ側が気合を入れれば上がる、という種類の数字ではありません。人が足りないことも、若い人が入ってこないことも、業種を問わず同じです。

産業廃棄物は空いたトラックに積めない。ふつうの荷物は近くの空いた車に積んでよいが、産業廃棄物は許可のある会社しか運べない。廃棄物処理法第14条第1項により、許可は区域ごと・品目ごとに必要。
許可のある会社が、許可のある品目を、許可のある区域で運ぶ。空いた車に積む、ができません。

もうひとつ、産業廃棄物という壁があります。

ふつうの荷物なら、「近くに空いているトラックがあるなら、そこに積んでもらえばいい」が成り立ちます。大綱も、共同輸配送や帰り荷のやりくりを進めると書いています。ところが産業廃棄物は、そうはいきません。

運ぶには、許可が要るからです。廃棄物処理法という法律の第14条第1項に、産業廃棄物の収集・運搬を仕事として行う者は、都道府県知事の許可を受けなければならない、と書かれています。しかもその許可は、荷の積み下ろしをする区域ごと。県をまたいで運ぶなら、両方の県の許可が要ります。許可は品目ごとでもあり、がれき類、汚泥、といった具合に分かれています。

ですから、たまたま近くに空いたダンプがあっても、そこに積むことはできません。許可を持っている会社が、許可のある品目を、許可のある区域で運ぶ。そうでなければ違法になります。

ひとつ補足しておきます。自分の会社が出した廃棄物を、自分で運ぶぶんには、許可は要りません。同じ条文に、そう書いてあります。許可が要るのは、よその会社の廃棄物を預かって運ぶときです。

いずれにせよ、一般の荷物の積載効率と、同じようには考えられないところです。産業廃棄物の契約については、産廃収集運搬契約書のほかに、書面化(運送申込書)は必要なのか?でくわしく書いています。

そして、これらは運ぶ側の努力だけでは動きません。いつ来てほしいか、どう積むか、いつ払うか。頼む側と運ぶ側で決まることです。大綱が荷主と消費者を巻き込んだ理由は、そこにあります。

まとめ

本稿は執筆時点(2026年9月)の情報です。下記の出典元で最新の情報をご確認ください。

参考・出典

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