東日本大震災を知る⑤|教訓は今にどう活きているか
「東日本大震災を知る」シリーズ最終回です。第4回では陸前高田のかさ上げ工事や高台移転・防潮堤整備など、復興まちづくりの取り組みをご紹介しました。最終回は、震災の教訓が現在の防災対策にどう活かされているのか、そして岩手県に迫る次の巨大地震への備えについてご紹介します。
震災を機に変わった津波想定の考え方
東日本大震災では、事前のハザードマップや津波警報の想定が実際の津波規模を下回っていたことが、被害拡大の一因になりました。この反省を踏まえ、国の津波想定は大きく見直されています。具体的には、過去数十年〜百数十年に一度発生する津波を想定する「レベル1津波」と、発生頻度は極めて低いものの、物理的に起こりうる最大クラスの津波を想定する「レベル2津波」の2段階で備える考え方に転換されました。ハザードマップの想定を「絶対的な安全ライン」ではなく、それを超える事態もありうる前提で捉え直す動きです。(出典: 内閣府「防災情報のページ」)
また、震災では学校が避難所・仮設住宅としても機能し、日頃の防災教育が児童・生徒の避難行動に直結したことから、学校防災の位置づけも大きく見直されました。第2回でご紹介した釜石の防災教育は、その代表例です。
次に迫る脅威 — 日本海溝・千島海溝地震
東日本大震災の震源となった日本海溝周辺では、今なお巨大地震への警戒が続いています。国の被害想定では、最大クラスの地震(マグニチュード9.1クラス)が発生した場合、岩手県宮古市で約30mの津波、岩手県南部の一部で震度6強の揺れが想定されています。最悪のシナリオ(冬季・深夜発生)では、北海道・東北全体での死者数が約19万9千人にのぼるという推計も示されています。この想定は、過去約6,000年間の津波堆積物調査に基づくもので、東日本大震災を上回る規模も視野に入れたものです。(出典: 内閣府「日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震モデル検討会」)
一方で、この想定は早期避難を徹底することで死者数を大幅に減らせるとも示されています。想定の大きさに圧倒されるのではなく、「では何をすべきか」に落とし込むことが重要です。石名坂の過去記事でも、岩手県沖の地震活動や盛岡市の防災ガイドについて取り上げています。あわせてご確認ください。

建設業として、私たちにできること
石名坂は、東日本大震災の復旧・復興工事に携わる中で、道路啓開・盛土・砕石供給といった建設業の役割の重みを実感してきました。次の巨大地震が起きたとき、内陸拠点として沿岸への支援ルートや資材供給を担う立場になることも想定されます。日頃からの重機・車両の点検、燃料・資材の備蓄、そして社員一人ひとりが「率先避難者」として行動できる意識づけを、引き続き大切にしていきたいと考えています。
まとめ — シリーズを振り返って
全5回にわたり、東日本大震災の発生メカニズムから被害の実態、救助・避難の記録、インフラ復旧を支えた建設業の役割、復興まちづくり、そして現在の防災対策までをご紹介してきました。「想定にとらわれない」「率先して逃げる」という釜石の教訓、そして地元建設業が果たしてきた役割は、次に来る災害への備えとしても変わらず大切な指針です。石名坂は今後も、地域のインフラを支える立場として、この教訓を業務と防災意識の両面に活かしてまいります。
※本稿は公開されている資料・記録をもとに構成した時点情報です。被害想定は今後の調査・検討により更新される場合があります。
参考・出典

