「 AX5ステップ 」とは?中小企業がまず目指すべき「AX2」までの道のりを解説

前回の記事では、中小企業におけるAX(AIトランスフォーメーション)の必要性について経済産業省・中小企業庁の資料をもとに解説しました。今回は、東京大学 松尾・岩澤研究室が2026年7月2日に公表した資料「GDP成長達成のためのAX5ステップとAXEL講義の企画」をもとに、AXの進み具合を5段階で捉える「AX5ステップ」の考え方と、中小企業がまず目指すべきラインについて詳しく解説します。

AX5ステップで示すAIトランスフォーメーションの5段階、中小企業がまず目指すAX2までの成長イメージ

「AX5ステップ」とは何か

AX5ステップとは、企業のAI活用の進み具合を次の5段階に整理したものです。

資料では、日本全体の実質GDP成長率を底上げするには、大企業だけでなく中堅・中小企業を含めた「日本中の企業」がAXを進める必要があり、少なくともAX2までは全企業が到達することが重要だとされています。

中堅・中小企業がまず目指すべきは「AX2」まで

資料では、企業規模ごとにAX5ステップの意義を整理しています。大企業〜中堅企業はAX1・AX2による最低限の業務効率化を経て、AX4(暗黙知の形式知化)による競争力強化を目指す位置づけです。一方、中堅〜中小企業はまずAX1・AX2で最低限の業務効率化を実現し、そのうえでAX3(自社固有データの利活用)を競争力の源泉としていくことが当面の目標とされています。

つまり中小企業にとって、AX4・AX5のような独自AI開発は将来的なテーマとしても、まずはAX1(生成AIの社員利用・社内ルール整備)とAX2(社内データとAIを連携させた業務のエージェント化)を着実に進めることが、当面の現実的な目標になります。

AX2まで進めると何が変わる?経費精算業務の例

資料では、AX2の具体例として経費精算AIエージェントの事例が紹介されています。社員は領収書を提出するだけで、AIが読み取り・入力・チェック・報告までを自動で行い、経理担当者は「承認/差し戻し」の最終判断のみを行えばよい仕組みです。従来のように経理担当者が細かく手入力し、全件を目視確認するやり方と比べ、作業時間を大幅に短縮できるとしています。

こうした「AIに任せる作業」と「人が判断すべき領域」を切り分ける考え方は、経理に限らず営業、在庫管理、人事、製造、医療・介護、自治体業務など、幅広い業務への横展開が可能とされています。

実質GDP成長率を最大1.6%pt押し上げる可能性

松尾研究室の試算によると、AX5ステップの推進により実質GDP成長率を最大で年1.6%pt押し上げることが可能とされています。この数値は他機関の推定とも一定程度整合的で、IMFはAIによる世界の労働生産性成長率への上乗せを最大0.8%pt、ゴールドマン・サックスは自然言語処理AIによる世界の生産性上乗せを1.5%pt、PwCはAIによる世界のGDP成長率を年平均+1%と推計しています。内閣府による推計はやや保守的で、TFP(全要素生産性)上昇率の押し上げが長期的に0.9%pt(うちAIの寄与が0.4%pt程度)としています。

なぜ日本でこそAXが効きやすいのか

資料では、日本ならではの3つの構造的条件がAX推進の追い風になると指摘しています。

中小企業の現場担当者が学べる「AXエバンジェリスト講座(AXEL)」

資料によると、AX1・AX2の社会普及に必要な人材は全国で約3万人規模と試算されている一方、現時点では大きく不足しているといいます(中小企業への助言役として約0.6万人の需要に対し約0.4万人が不足、社内推進役として約2.6万人の需要に対し約2.2万人が不足)。

この担い手を育成するため、松尾・岩澤研究室では現場の非IT人材・中高年層を主な対象とした無料オンライン講座「AXエバンジェリスト講座(AXEL)」を企画しています。2026年8月より募集を開始し、9月より開講予定。全6〜7回程度のオンライン形式で、修了者には修了証が発行されます。受講料は無料ですが、実際に使用するAIツールの利用料(数千円程度の実費)は自己負担となる見込みです。経理・営業・生産管理・人事など、身近な業務でのAI活用パターンをハンズオン中心に学べる内容が予定されています。

まとめ

AX5ステップは、生成AI導入(AX1)からデータ連携によるエージェント化(AX2)、業務プロセス刷新(AX3)、独自AI開発(AX4)、業界横断の高度AI開発(AX5)までの5段階で構成されています。中堅・中小企業にとっては、まず自社の現状がどの段階にあるかを確認し、AX2の水準まで進めることを当面の目標にするとよいでしょう。AXエバンジェリスト講座のような無料の学びの場も、今後整備されていく見込みです。

※本稿は2026年7月2日時点で東京大学 松尾・岩澤研究室が公表した資料(第1回 中小企業AX実装推進タスクフォース資料)をもとに作成しています。AXエバンジェリスト講座の詳細な内容や開講スケジュールは、今後の検討状況により変更される可能性があります。

GDP成長達成のためのAX5ステップとAXEL講義の企画(東京大学 松尾・岩澤研究室、内閣官房資料)

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